rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月14日 評論「自立の盤石の上に強国がある」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」に第1面全面を費やして掲載されたものである。

 同評論は、「1」と「2」に分かたれ、「1」の要旨は、冒頭部分の「社会主義自立経済は、我が国家の尊厳と自主権、無尽強力な国防力と人民の幸福な生活を物質的に担保する確固たる基盤である」ということに尽くされている。それをやや敷衍すると、まず、「自立こそすなわち自主であり、愛国であり、民族自存である」という。なぜなら、「我が国家の戦略的地位が不可逆的であるのは、軍事力が強大であるからのみならず、それ(軍事力)が徹底して我々の手によって準備された自立によって生み出されたものであるからである」。したがって、「今日の先鋭な情勢下において我々が自衛の力、自立の土台を強化する事業を疎かにするなら強国としての震源と地位はもちろんのこと、国と民族の運命も滅亡してしまう」として、国防力増強の必要を強調する。

 同時に、人民生活についても、「自立経済は我が共和国の繁栄と人民の幸福のためのしっかりとした基礎である」、「我々が建設する強国は、国力が強いのみならず、すべてが盛んで人民が世の中にうらやむもののない幸福な生活を心ゆくまで享受する富強繁栄する国である」と主張している。

 更に、「将来」「後代」に視点を移して、「自立的経済発展の全盛期を開いていくことは、我が世代だけでなく我々の未来、我々の後代のための愛国事業である」、「「今日、我々の前進途上に立ちふさがる試練と難関は暗酷であるが、自力更生、堅忍不抜の意志で自立経済の土台をしっかりと固めていけば、後代がその恩恵を受け、堂々と尊厳をもって生きていくことができる」と主張して、現在の苦労に耐えることを訴えている。

 次の「2」では、この自立路線が金正恩の偉大・賢明な領導により展開され、その結果、多大な成果を上げていると主張している。すなわち、「敬愛する金正恩同志は、我が人民の胸の中に自立の信念を盤石のように固めて下さった偉大な領導者」であり、「敬愛する総秘書同志の膝下で我が人民は自力更生、自給自足の闘争方式、生活方式、発展方式をより深く体得した」という。

 具体的な政策に関しては、まず工業分野に関し、「我が党が提示した整備補強戦略は、現実的条件に即して国の経済を絶え間なく発展させることのできる最も早い捷径を明らかにした科学的な経済戦略である」とすると同時に、農業分野に関しても、「農村振興こそ自立経済の強化であり、社会主義の全面的発展である」と主張する。また、別の柱として科学技術振興策をとりあげ、「金正恩同志は、人材と科学技術を基本動力として自立の盤石をしっかりと固めていかれる傑出した領導者」と称賛している。

 ちなみに、本日の「労働新聞」は、第2面全面を費やして、「偉大な金正恩時代を象徴する人民の新街区で平壌の姿」と題し、金正恩執権以降に建設された平壌市内の高層ビル群などを写真付きで称賛する記事を掲載している。1面、2面あわせて、金正恩による「自立」路線の正当性を主張することに躍起になっているといえる。

 もとより、そうした主張は、従前の繰りかえしではあるが、今日、それを改めてこのように大々的に喧伝するのは、党中央委員会全員会議が近々に開催予定(あるいは既に開催?)であることと無関係ではないであろう。同会議で、自立経済路線の再確認するような方針が打ち出されるのではないだろうか。いずれにせよ、こうした主張を繰り返していること自体、それに対する根深い疑問が広範に存在することをうかがわせているといえよう。