rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月12日 評論「農村党初級幹部が遂行すべき新たな党的任務分担」

 

 現在、北朝鮮が農業部門の振興を最重要課題に位置付けていることは、改めて言うまでもないが、標記評論は、そのためにどのような取り組みを行うべきかを具体的に指摘している。

 まず、総論的に、農民の思想・意識などの改革を先行させるべきことを強調し、「農村を振興させる上で優先的な課題は、農村革命の主人である農業勤労者を啓明させることである。社会主義農村発展は、すべての農業勤労者の思想意識と生活方式における変化と発展を前提とし、彼らが農村革命の主人、主力軍としての責任と役割をまっとうしていくことを要求する」と主張している。

 その上で、具体的に、「現時期、里党秘書をはじめとした農村党初級幹部が自ら背負い遂行すべき新たな党的任務分担」として、「農業勤労者が住宅を常にきれいに片付け、新時代社会主義農村文明の創造者、享有者らしく生活を整えていくように識見も高め、情緒教育も粘り強く行い、古い因習を根こそぎにする闘争も適切に配合していくこと」をあげている。

 また、そうした取り組みに関し、「古いものは自ずとなくなりはせず、1,2回の思想教養をしたからといって、完全に根こそぎにすることはできない。農村革命は、文字通り農村に残っているあらゆる古いものをなくしてしまう闘争である」、「古い生活慣習がそのまま残っている農場において農業生産の根本的な革新が起き得ないということは自明の理である」として、「古いもの」の払拭の困難性・重要性を強調している。 

また、「農業勤労者が必勝の信念をあふれ、常に革命的に、浪漫的に生き働くように積極的に導くとき、生活において余裕と覚悟が生じ、自己の集団に対する愛着と矜持も持つようになるのである。まさにこうした肯定的な雰囲気の中で農業勤労者の胸ごとに自分の分組、自分の作業班、自分の農場に対する愛着心が育ち、国の米櫃を満たすために一身を捧げる愛国熱意が培養される」との考えに基づき、「多様な文化情緒生活を意図的に組織する」よう訴えている。

 同評論が払拭を訴える「古い因習」「古い生活習慣」というのが、具体的に何をさすのか判然とはしないが、推測するに、一つは、新たな営農方法などの導入に消極的な守旧姿勢であろう。新たな「科学技術」導入による農業生産の向上を目指す指導部の目には、そのような姿勢が改革を阻害する要因と映っているのであろう。

 もう一つは、集団の利益よりは個人の利益を優先させる「利己主義」的姿勢ではないだろうか。そのことは、「自己の集団(分組、作業班、農場)に対する愛着」の「培養」が繰り返し強調されていることからも、逆に、そうした「愛着」が希薄な現状をうかがうことができる。

 そうした農村における思想革命の取り組みが奏功するのか否かは、北朝鮮の今後の盛衰に大きく影響する問題であろう。今、農村住宅の建設を全国で盛大に推進しているのも、まさに、それを側面から支えるためであろう。成否を注視していきたい。