rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年5月26日 政論「農村党員」

 

 本日の「労働新聞」は、第1面を費やして、標記政論(筆者:方城華)を掲載している。長大なものなので、例によって、関心を引く部分だけ、つまみ食い的に紹介したい。

 同政論は、前段の「1」で、今日、農村党員が果たすべき役割の重要性を強調しているが、その前提として、「農村問題を社会主義共産主義建設偉業実現において必ず解決すべき戦略的問題として重視し、社会主義建設の全面的発展段階の要求に即して農村振興の新時代を粘り強く切り開いている偉大な我が党」の路線を指摘している。

 また、後段の「2」では、そうした農村党員に期待される具体的な役割について、「(農村)党員が革命課業(=営農事業)遂行において先鋒的役割を果たし、実力と能力で大衆を導き、群衆の中で核心的で模範的な役割を果たさなければならない」、「農村党員は、皆が今日の赤い扇動員になり、すべての農業勤労者を党が望み意図する真の農村革命家、愛国農民として準備させる核心になろう」などと訴えている。

 また、本日、同政論とは別個に掲載された「社会主義農村問題の根本的解決のために」と題する評論は、「優先的に重要な事業」として、「農業勤労者と農業勤労者同盟員たちを農村革命の担当者、主人として育てる上での基本は、彼らの思想を改造し、政治意識を高めてやることである」とした上で、それに続く課題として、「知識型の農業勤労者」の養成、すなわち「農業勤労者の見聞を広めてやり、記述技能水準を高めてやるための農業科学技術学習と先進営農技術普及事業を活発に展開」すること、「文明的な社会主義農村」建設のため、「農業勤労者の文化意識水準を高め、農村に革命的で健全な文明的な生活気風を確立」することをあげている。これは、まさに、農民を対象して、「思想・技術・文化」の「三大革命」を実践するということにほかならない。

 要するに、これら政論や評論は、今日展開されている農業重視政策が単に食糧増産だけを目指すものではなく、農民の革命化といった目標を含む「農村問題の解決」という長期展望的な路線の一環として、推進されていることを改めて示したものといえる(そのことは、5月24日付け本ブログで指摘したばかりだが)。そして、そうした目標実現を主導・推進するのは、当然、「党」であるべきであり、上掲政論の主張は、まさに、そうした事情を反映したものであろう。

 換言すると、今日の農業集中政策は、それを具体的に提起した本年2月の党中央委第8期第7回全員会議の決定により急遽実施されているものとして理解するのでは十分でなく、「農村振興」を提起した2021年12月の党中央委第8期第4回全員会議以降の流れの中での2年目の取り組みという側面から見る必要があるということである。そうした視点に立つならば、最近の農業施策が、灌漑体系整備などに重点を置くもので、切迫した食糧不足から免れるための緊急措置としては迂遠な印象を与えるものとなっていることも、さほどの違和感なく理解することができるのではないだろうか。