rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月27日 24日発射のミサイルは、「火星15」?

 

 本日の聯合通信記事によると、米韓軍事当局は、北朝鮮が24日に発射したミサイルについて詳細に分析した結果、北朝鮮が発表した新型の「火星17」ではなく、2017年11月に打ち上げた「火星15」であったとの結論にいたったという。赤外線センサーにより観測されたエンジンの発射口が2つであった(「火星17」は4つ)ことなどが根拠になっており、今回の発射で前回の発射時に比して頂点高度、飛翔時間などを大幅に延長できたのは、弾頭重量を軽くしたためと見ているとのことである。米韓軍は、24日の発射直後から、それが「火星15」である可能性を指摘していたと報じられていた。

 25日の本ブログで指摘したとおり、仮にそうであったとしても、今次発射が、核実験、大陸間弾道ミサイルのモラトリアムの中断であることに変わりなく、しかも、我が国EEZ内に打ち込んだわけであるかから、その政治外交的な意義の大きさに変わりはないといえよう。

 一方、軍事技術的には、「火星17」は未完成ということになるが、それにしても、「衛星準備」と称して行った2回の発射には、それなりに成功しているようであるから、3回目(3月16日)の失敗原因の解明・解決は、時間の問題であり、いずれは本格的打ち上げが行われることを覚悟しておいた方が良いと思う。

 今次発射が「火星15」であったとした場合、それが何よりも深刻な問題となるのは、北朝鮮国内の民心に与える影響であろう。もちろん、北朝鮮当局は、それを隠し通そうとするであろうが、そうした情報がいずれ国内に浸透・拡散することを防ぐことは不可能であろう。

 その場合、虚偽ニュースの「主演」を務めた金正恩の威信はどうなるのか、今回の発射に関する北朝鮮の報道ぶりが従前に比しても過剰演出といえるほどのものであっただけに、それが虚偽であったことを知った場合のショック、落胆も、また小さくはないと考えられる。

 そもそも、北朝鮮は、なんのために、こうしたことをしたのだろうか。また、誰がこうした演出を考え出したのか。米韓の情報力を過小評価していたのか、など疑問はつきない。

 あるいは、金正恩の自作自演であったのかもしれない。余人が金正恩を使った虚偽ニュース作成を提案するというのは、余りにリスクが大きすぎて考えにくい。プーチンウクライナ侵攻と同じで、金正恩自身が考え出したのであれば、周囲は、それはばれるかもしれないからやめた方が良い、とは言えなかったのかもしれない。そうであったとすれば、独裁政治のアキレス腱が露呈したことになる。いずれにせよ、今回の事態は、北朝鮮にとっての最大の課題となっている金正恩への求心力維持(同人への絶対的信任の構築)に深刻なダメージをもたらすことになろう。

 その延長線上で考えておくべきは、それでは、金正恩は、それを挽回するために何をしてくるのかということである。核実験再開(少なくとも、その素振り)も視野に入れておくべきであろう。