2022年4月14日 軍将官の大量昇格を発表
本日の「労働新聞」は、「金日成同志の誕生110周年に際し」、大将に6人、上将に3人、中将に16人、少将に70人(計95人)の昇格を命じた4月14日付け「党中央軍事委員会委員長命令」を掲載している。
このうち、大将に昇格した者の経歴等は次のとおりである(氏名・音訳、聯合通信本日付け記事による)
金正官:国防省第一副相(前国防相、以前次帥であったところ、上将に降格されていた)
金明植:海軍司令官(以前、大将であったところ、昨年7月上将に、12月中将に降格)
金光革:(以前、航空・反航空軍司令官・大将であったところ、昨年2月解職、現職不詳)
鄭慶沢:国家保衛相(2020年5月大将に昇格したが、4か月後上将に降格)
呉日正:党中央委軍政指導部長(これまで上将)
康順男:党中央委民防衛部長(これまで中将)
また、上将に昇格した3人は、いずれも軍団長であるという。
金日成や金正日の誕生記念日などに際しての軍将官の昇格人事は恒例的なものといえるが、今回の人事で特徴的なのは、大将昇格者6人のうち、党中央委部長の2人を除く4人がいずれもいったん降格された後に再昇格させられた人物であるということであろう。
これは、「信賞必罰」、とりわけ、いったん処分されても、その後、忠誠を尽くせば再チャレンジ可能ということを印象付けるもので、そういう形で幹部の綱紀粛正、忠誠心をつなぎとめようとの狙いによるものと思われる(いったん処分されたら二度と復活不可能ということになると、失敗・不正を必死で隠そうとするであろうし、それが露見し、あるいはしそうになった場合には、「窮鼠猫を噛む」的な反発に出るおそれがある。そこまで至らなくとも処分後は将来の希望を失って勤労意欲を著しく低下させるであろうが、こうした「希望」を与えることで、そうした副作用を防ぐことができよう)。
ただ、経験豊富な老将軍たちの胸中を察すると、「上げたり下げたり、若僧にいいように弄ばれている」との不満が生じないとも限らない。そこは程度問題で、あまりやり過ぎると逆効果になるのではないか。それでも、「(好かれて)舐められるよりは(憎まれても)恐れられるのが良い」と割り切っているのかもしれないが。
ちなみに、本日の「労働新聞」には、金正恩が13日、普通江江岸楼閣式住宅区の竣工式に出席、テープカットを行った後、そこに入居予定の朝鮮中央放送の名物女性アナウンサー・李春姫や「労働新聞」董泰官論説委員(「政論」執筆者として有名)らの住宅を訪問したとの記事が多数の写真とともに大々的に掲載されている。同地区こそ、まさに金正恩が与える「恩恵」の典型であり、その受益者(入居者)には、最大限の忠誠発揮が期待されているのであろう。