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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年8月31日 第6回労農赤衛軍指揮成員会議を開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が8月29日、30日の両日、4・25文化会館において開催されたことを伝える朝鮮中央通信の記事を掲載した。

 同記事が報じる同会議の概要は、次のとおりである。

  • 開催目的:「各級党組織と民防衛部門の事業を総括し、変遷する情勢の要求に即して郷土防衛の基本力量である労農赤衛軍の作戦戦闘能力をより高め、全民抗戦準備を完結する上で新たな転換をもたらすため」
  • 主な参加者:金徳訓(内閣総理)、趙勇元(組織秘書)、朴正天(党秘書)、趙春竜(政治局候補委員・党軍需工業部長)、社会安全相朴守一。労農赤衛軍各級指揮成員、社会安全機関幹部、民防衛保障及び関連単位幹部
  • 金正恩書簡伝達:内容、紹介者ともに言及なし
  • 「報告」(姜順南党民防衛部長・労農赤衛軍司令官):課題として、①唯一的領軍体系のより徹底した確立、②思想教養事業による「主体的な戦争観点と透徹した主敵観」の扶植、③「訓練の実戦化、科学化、現代化」推進により、指揮成員と隊員の能力向上、④各級党組織による民間武力に対する組織指導事業、掌握指揮の「周到精密な実施」、などを訴え
  • 「討論」(討論者氏名不詳):「民防衛事業に対する党的指導を強化して成し遂げた成果と経験」に言及、「労農赤衛軍の臨戦態勢完備のための実質的な改善、顕著な前進(のための)思想的覚悟が不足したことで発露した一連の偏向も分析」
  • 「民防衛部門の戦い準備を完成させるための展望計画を発表」(朴正天):内容には言及なし
  • 表彰:「国家防衛力強化と全民抗戦準備において先行した労農赤衛軍部隊(複数)に党中央軍事委員会表彰状を授与」
  • 金正恩同志に捧げる宣誓文」採択(内容に言及なし)

 以上の開催状況を前回大会(2019年2月11日開催)と比較すると、基本的には、金正恩による書簡送付をはじめ、前例踏襲であったといえるが、強いて言うと、①大会期日が前回の1日から今回は2日に延長されたこと、②優秀部隊に対する表彰が行われたこと、③前回には出席した総参謀長をはじめとした人民軍高官の出席が報じられていないこと、などが異なっている。

 このうち、①,②は、民防衛部門の位置づけがそれなりに向上したことの表れといえよう。前回大会は、ハノイ会談の直前、「経済集中路線」の下での開催であったことを勘案すると、自然な変化と考えられる。ただ、だからと言って、北朝鮮が本当に臨戦態勢完成を急いでいるのかというと、それはやや疑問で、むしろ当面の最大の狙いは、そうした戦争準備のための活動を通じて、国内に想定敵である韓国に対する「透徹した主敵観」を扶植することにあるのではないだろうか。

 また、③については、今回会議の参加者として、社会安全相及び社会安全機関幹部が挙げられていることとあわせて考えると、各地の労農赤衛軍部隊に対する日常的な支援・指導(例えば兵器の保管、訓練場所の提供)などが人民軍から社会安全部に移行したことを示唆するものとの推測が可能であろう。これだけの根拠での即断は慎むべきかもしれないが、仮にそうした推測が正しければ、本当に戦争を想定しているというよりは、むしろ、国内の治安・統制のための予備部隊という側面を重視していることの反映と考えることができよう。本当に戦争準備のためであれば人民軍との一体化を促進すべきであり、こうした措置は、それとは矛盾したものとなるからである。