rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年9月1日 社説「我が国家第一主義を全面的に具現していこう」

 

 標記社説は、冒頭で、「我が国家第一主義は、社会主義祖国の偉大性に対する矜持と自負心であり、国の全般的国力を最高の高みに登らせようとする強烈な意志である」とし、また、「我が国家第一主義を全面的に具現していくということは、人民の心の中に堅持された我が国家に対する熱烈な愛の感情を昇華させて政治、経済、軍事、文化をはじめとしたすべての分野において共和国の位相をより高く轟かせていくことを意味する」と説明した上で、その必要性・意義とそのための課題を論じている。

 必要性・意義としては、まず、「我が国家第一主義を全面的に具現していくことは、敬愛する総秘書同志の構想と意図のとおり国家発展を力強く推動するための先決条件である」ことを、次に、「人民の精神力と創造的熱意を総噴出させ、国家発展の新たな局面を開くための根本要求である」ことをあげている。

 それを実践するための課題としては、まず、「敬愛する総秘書同志の不滅の国家建設思想と業績を固く守護し、限りなく輝かしていかなければならない」とする。これは、要するに、金正恩の望む方向がすなわち、国家発展の方向であるということであろう。

 次に、「誰もが高い公民的自覚を抱き、共和国の復興発展のための闘争において誠実な汗と熱情を捧げなければない」とする。ここで重要なのは、「誠実」ということであろう。「すべての部門、すべての単位において他人に対する依存心と輸入病、本位主義と単位特殊化をはじめとして、我が国家第一主義に抵触する落伍した思想を断固として根絶やしにして、国家的利益の見地から事業を展開する気風」を確立するよう訴えている。

 また、「すべての人民が国家を尊厳をもって扱い、強大国の公民らしく堂々と行動する気風を確立していかなければならない」ともいう。これは、具体的には、「国旗と国章、国家をはじめとした国家象徴を神聖に扱い、国家のすべての法に絶対服従する気風」である。

 最後に、「党及び勤労団体組織において我が国家第一主義を高く発揚させるための思想教養事業を攻勢的に展開しなければならない」として、社会各層に対し、それぞれに即した思想教養活動を実施するよう訴えている。

 なお、本日の「労働新聞」は、これとは別に、「限りなく愛し輝かせていく我々の国旗」と題する評論を掲載し、「我々の藍紅色共和国国旗は、人民の永遠の矜持であり、高い尊厳であり、燦爛たる未来である」、「誰もが聖なる国旗の前に自らを立たせてみて、今日の一日一日を価値高い偉勲で輝かしていかなければならない」などと訴えている。

 こうした一連の論調は、9月9日に「共和国創建記念日」を迎えることを前提に、月初めに際して掲載されたものであろう。

 これらを通じて、改めて確認できることは、「我が国家第一主義」における「国家」が意味するのは、朝鮮全体ではなく、社会主義体制を採る「朝鮮民主主義人民共和国」であることである。

 次に、このスローガンの構造が、「自負心」「矜持」を梃子にして、外部に依存しない「自立自存」と国家全体の利益を優先(換言すると利己的発想を抑制)する姿勢を扶植することを目指していることである。そして、そのために活用される道具は、国旗である。近年、様々な行事・集会・会議などの冒頭で「国旗掲揚式」が厳粛に執り行われるのがいつしか恒例化しているが、こうした現象は、まさにそのような狙いに基づくものと考えられる。

 なお、従来の「我が国家第一主義」言説と比較した同社説の特徴としては、その「政治、経済、軍事、文化をはじめとしたすべての分野」における「全面的具現」を主張していることで、これは、現在の「全面的発展」路線の反映であろう。もう一つの特徴は、それを金正恩の思想・構想と結び付けていることである。この点は、今後、「金正恩同志革命思想」の一つの構成要素として更に理論化していく上での布石ないし兆候とも考えられる。