rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年12月16日 「大出力固体燃料発動機地上噴出試験」を実施

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩の「指導」の下で実施された標記試験に関する記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 「国防科学院重要研究所では、12月15日午前、西海衛星発射場平安北道鉄山郡東倉里所在)において我が国で最初となる140tf推進力大出力固体燃料発動機(の)地上噴出試験を成功裏に実施した」
  • 金正恩が「現地で重大試験を指導」し、趙勇元(秘書)と金正植(軍需工業部副部長)が同行した。
  • 「試験結果、発動機の推進力と飛力積、燃焼特性、作業時間、推進力ベクトル操縦特性をはじめとしたすべての技術的指標が設計値と一致し、その信頼性と安全性が科学的に厳格に確証」され、「新型戦略武器体系開発の確固たる科学技術的担保」を得た
  • 金正恩は、「党第8回大会で提示した国防科学発展及び武器体系開発5か年計画の戦略武器部門最優先5大課題実現のためのまた一つの重大問題を解決したことを高く評価」し、「最短期間内でのまた別の新型戦略武器の出現を期待・・鼓舞激励」

 上記記事の内、「140tf」とは、140トンの重量を持ち上げることのできる力を示すもので、「火星砲17」については、ツインエンジンを2基結束して160tfの推力を出していると推測されていたという。したがって、このエンジンは、それとほぼ同等の推力を1基で出すことができるということになる。ちなみに、米国が運用中のICBMミニットマン3型の1段エンジンの推力は、80ftとのことで、それよりもはるかに強力ということになる。

 また、「推進力ベクトル操縦」というのは、噴射口の角度を変えることによりミサイルの姿勢を制御する技術だそうで、これまでも火星12などの中距離弾道ミサイルに使用されてきたとのことで、それを長距離ミサイルにも活用できるようになったことを示すとみられる(以上の解説は、韓国・聯合通信の報道によるもの)。

 いずれにせよ、長距離弾道ミサイルへの固体燃料使用型エンジン開発は、従前の液体燃料型に比較すると発射準備の時間短縮などで大幅な進歩であることはいうまでもない。今後は、金正恩の言葉にも示されているとおり、このエンジンを使用した新型長距離弾道ミサイルの開発が加速されることになるのであろう。先日、「火星砲17」の発射が大々的に喧伝されたばかりだが、それを超える、更なるICBMの試射がいずれ行われるということである。