rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月19日 金予正副部長が談話を発表

 

 本日、朝鮮中央通信が金予正副部長の談話(19日付け)を報じた。骨子を紹介したいのだが、論理性がなくまとめようがないので、やや長くなるが日本語訳の全文を紹介する(文頭の番号及び下線は、本ブログで付したもの)

① 心から朝鮮半島地域の情勢を懸念し、平和と安定を願うなら、全ての国が国際平和と安全保障の重大な責任を持った国連安保理を自分らの極悪な対朝鮮敵視政策実行の機構に転落させようとする米国の強権と専横を絶対に許してはならない。

② また、合法的な主権国家自衛権を放棄させようとする米国とその追随勢力の意地悪な行為を黙認してはならず、それが無駄な努力であることを知るようにすべきである。

③ 今回にもわれわれの敵手は、根拠もなく共和国の自主権に対する露骨な侵害行為を働いた。

④ 常にいわゆる威嚇に備えるという口実を持ち出して拡張抑止、連合防衛態勢を言い立てながら米国と南朝鮮の連中が朝鮮半島地域で軍事的優勢を獲得し、支配的地位を占めてみようとする危険極まりない欲深の野心と企図を露骨にしているのは刻一刻、地域の安定を破壊し、情勢をいっそう危うくするようにしている。

⑤ 米国は、世を欺まんし、朝鮮民主主義人民共和国に対して敵対的ではなく、対話に開かれているというたわごとを取り止め、対話の場で時間を稼ごうとする愚かな窮策を諦め、わが国家の安全を脅かす一切の全ての行動を中止し、共和国のイメージをダウンさせようとせず、自国の展望的な安全のためにも常に熟考すべきであろう。

⑥ 南朝鮮の連中も、今のようにあたかも「勇敢無双」であるように、無分別に振る舞っていては結局にどんな災いを自ら招くようになるのかを考えてみる方がよかろう。

⑦ 愚か者であるので悟らせてやるが、大陸間弾道ミサイルICBM)でソウルを狙うことはないであろう。

⑧ われわれは、相変わらず南朝鮮の連中を相対にする意向がない。

⑨ 委任によって最後に警告する。

⑩ 敵の行動の件件事事を注視し、われわれに対する敵対的であることに事ごと相応し、きわめて強力な圧倒的対応を実施する

 同談話の主な疑問点としては、次のような点がある。

 まず、①,②の文の主語は、誰なのか(国際社会あるいは韓国民?あるいは自国民?)。次に、③の「今回にも」とは具体的に何を指しているのか、④が非難の対象のようにも思えるが、何時誰が何を言ったとか、そういった具体的な出来事が示されていない。

 そうした意味不明の言辞を連ねた上で、⑤は対米メッセージ、⑥~⑧は対韓メッセージとなっているが、改めて言うほどのこともない内容である。

 それなりに意味があるのは、⑩であろうが、それも細かく見ると、敵の「敵対的」な行動への対応について、前段で「相応」としつつ、後段では「きわめて強力な圧倒的対応」と矛盾したことを言っている。これでは、「警告」にならないのではないか。

結局、本当に意味のある部分は、⑨の私(金予正)は「委任」を受ける立場にあるということだけで、それをアピールしたくて出した談話ではないかと勘繰りたくなる。

 2月17日付けの外務省代弁人談話がそれなりに論理的で説得力もあり、何に対し警告しているのか明確であったのに比して、恥ずかしいような内容と言わざるを得ない。以前の金予正談話は、表現は独特であっても、それなりの内容なり説得力があったように思うが、最近の同人の談話は、水準が落ちているように感じる(まったくの主観的決めつけだが)。それは、彼女を支えるブレーンの質が低下していること、すなわち、その党内での影響力が低下していることを反映したものと考えるのはうがちすぎであろうか。逆に言えば、そうした状況にあるからこそ、談話発表で何とか存在感を発揮しようとしているのかもしれないが、むしろ逆効果では、と余計な心配をしてしまう。