rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月20日 金予正がまた談話を発表

 

 朝鮮中央通信は、本日、前掲した600mm放射砲発射訓練に関する報道の直後に、昨日に続き発表された金正恩の談話を掲載したという。

 同談話は、その大半を北朝鮮が18日に発射したICBMに対する韓国での技術的批判に対する反論に費やして、技術開発の完了を主張した上で、最後部分で、米韓の軍事動向活発化に話を転じ、それへの「相応の対応」を警告する内容となっている。

 具体的に見ると、まず前段では、「命令書」下達から発射まで相当の時間がかかったことについて、「命令書」は「午後の時間中の有利で適当な瞬間を判断して奇襲的に発射」するように指示していたのであり、それを受けて、気象条件及び米韓の「偵察機7機が全部着陸した15時30分から19時45分までの時間を選んで」発射したと主張している。このほか、「燃料アンプル化」とか「弾頭再突入」についてもやや趣旨不明な陳弁をおこなっている。その上で、「われわれは満足する技術と能力を保有したし、今やその力量の数字を増やすのに注力することだけが残っている」と主張している。

 次に、後段では、「最近、朝鮮半島地域での米軍の戦略的打撃手段の動きが活発になっている」ことに対して、「直・間接的ないかなる憂慮があると判断される時には、相応の対応に乗り出す」との方針を明示するとともに、とりわけ「太平洋をわれわれの射撃場に活用する頻度は、米軍の行動の性格にかかっている」として、太平洋方面に向けたミサイル発射の頻繁化を示唆している。

 金予正の今日の談話は、昨日のそれに比べれば、それなりに論旨が理解できる。ただし、直前に実施・報道された600mm放射砲の発射訓練については、直接の言及がないだけでなく、それを前提とした論旨にもなっていないように思われる。「太平洋云々」も、同訓練の直後のものとしては、ややピント外れの感がある。

 そうして見ると、談話の重点は、前段の反論にあるのかもしれない。そして、政府高官等の公式発言・評価でもない、「いわゆる軍事研究所の専門研究委員なる者」の批判にそれほど熱心に反論するのは、「米国と南朝鮮の連中が朝鮮半島地域で軍事的優勢を獲得し、支配的地位を占めてみようとする」(昨日の談話)ことを何としても阻止したい、との一念からであろう。

 そういう意味では、この談話も前掲の600mm放射砲発射訓練も、すべて米韓に対する軍事的な「優勢」誇示のためという点で符合していると言える。何故、それほど「優勢」にこだわるのかと言えば、軍事面での威勢をもって金正恩の基本路線(そしておそらくは統治の正統性)の最後の拠り所にしようとしているからであろう。本日の「労働新聞」トップに掲載の論説「自立の信念を百倍しよう」は、次のような一節は、その端的な根拠といえよう。

 「世界が公認する最強の政治軍事国家、いかなる列強も無視できず尊重する国、・・これが半万年民族史でこれまでなかった偉大な我が共和国の絶対的国威であり国光である。この尊厳と栄光は、帝国主義者どもに劣等民族として蔑視され長年の間あらゆる受難と苦痛、屈辱を強要されてきた我が人民において、数百万トンの米や億万の金とも交換できない、飢え死にし凍え死にしたとしても捨てることのできない命のようなものである。」