rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月14日 外務省声明を発出、国連での北朝鮮人権問題協議を論難

 

 朝鮮中央通信は、昨日、3月12日付けの外務省声明を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 「米国は、・・われわれの「人権問題」を論議する国連安保理非公式会議なるものを強圧的に開こうともくろんでいる」
  • 「米国の卑劣な「人権」圧迫騒動を対朝鮮敵視政策の最も集中的な表れとして強く糾弾し、全面排撃する」
  • 「米国と追随勢力の対朝鮮「人権」策動は、・・朝鮮人民の真の権利と利益を抹殺するための最も政治化された敵対的手段にすぎない」
  • 朝鮮民主主義人民共和国は、国家の自主権と権益を徹底的に守るために米国とその追随勢力の最も卑劣な敵対謀略策動に超強力に対応する」

 同声明の発出は、17日から国連安保理北朝鮮の人権問題を話し合う非公式会合開催が予定されているとの海外報道を受けたものとみられる。

 これまでの米韓合同演習などに対する外務省の批判が副相や室長の談話であったのと比較すると、このたびの「外務省声明」というのは相当高い段階での意思表示である。ちなみに、韓国報道(ハンギョレ新聞)によると、北朝鮮が「外務省声明」を発出するのは、2017年9月以来、5年6か月ぶりとのことである。

 このことは、北朝鮮が「人権問題」への批判に対して、軍事演習に対する以上に神経を尖らせていることを示唆するものともいえる。韓国が尹政権発足以来、とりわけ最近に至って、同問題への取り組みを強めていることも、そうした鋭い反発の背景になっていると考えられる。

 こうした「人権問題」に対する反発の強さは、北朝鮮がそれだけ同問題を避けたがっていること、換言すると、それが北朝鮮のアキレス腱であると認識していることを反証するものと考えることもできよう。特に、「人権問題」に関心の強い韓国内の世論などに及ぼす影響に焦点を当てれば、その効果は小さくないと言えよう。

 しかし、国際社会全体に視界を広げた場合、北朝鮮「人権問題」の提起が果たしてどのような効果をもたらすかは一考の必要があろう。同国の核開発に対しては、反対表明をためらわない国であっても、自国の抱える内政事情などから、その「人権問題」を非難することには躊躇する国が少なからず存在すると思われるからである。そう考えると、北朝鮮に対する核と「人権」の両面からの締め付けという戦略は、それなりに国際社会の大多数を集約できている「非核化要求」の足並みを乱すおそれを内包しているともいえよう。

 今回の外務省声明は、そうした点を踏まえた上で国際社会での共感拡大に向けた「反転攻勢」を目指したものとも考えられる。

 なお、別件であるが、韓国軍によると、北朝鮮は、本日(14日)午前7時41分から51分ころにかけて、黄海南道長淵(音訳)付近から東(日本)海上に短距離弾道ミサイル2発を発射(飛行距離約620㎞)したとのことである。これについては、北朝鮮側からの報道を見た上で改めて論じることとしたい。