rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月5日 外務省代弁人声明で米韓を重ねて非難

 

 朝鮮中央通信は、11月4日、同日付けの外務省代弁人声明を報道した。同声明の骨子は、次のとおり。

  • 我々は、「ビジラント・ストーム」訓練の中止を要求してきたが、米国は、「我々の正当防衛対応措置にかこつけて4日まで予定された訓練の期間を延長することに決定したのに続き、国連安保理会議まで招集する挑発的妄動を繰り返している」
  • 「米国の無責任で無謀な行為を主権国家の安全に対する重大な侵害、朝鮮半島と地域の平和と安定を願う国際社会の念願に対する破廉恥な挑戦と烙印(らくいん)を押し、これを強く糾弾、排撃する」
  • 「共和国武力の軍事訓練は、敵対的挑発行為に対する当然な反応であり、行動的警告である」
  • 「持続的な挑発には持続的な対応が伴うものである。朝鮮民主主義人民共和国は、自分の自主権と安全利益を侵害しようとする敵対勢力のいかなる企図に対しても絶対に黙過しないであろうし、最後まで超強力対応で応える」

 また、韓国軍の発表によると、北朝鮮では、同報道に先立つ4日午前11時ころから午後3時ころまでの間、軍用機(戦闘機及び爆撃機)約180回の飛行が観測された(韓国軍設定の戦術阻止線(TAL)は超えず)とのことである。

 今次発出された「声明」は、これまでの「談話」より一層公式的なものと言えるであろう。直接的には、4日に予定されていた安保理での北朝鮮問題討議に向け国際社会へのアピールを意識したものとみられ、「地域内の国々」の同調や「北東アジアの全般的安全環境」「地域の憂慮」などへの言及が繰り返されている。

 また、「持続的な挑発には持続的な対応が伴う」などとの表現は、今次訓練の終了後も、「超強力対応」を続ける可能性を示唆したものとも解釈できる。

 しかし、韓国報道によると、3日午後9時台に発射された3発のミサイルについては、旧式のスカッドC型と推測されるとのことであり、新型ミサイルの連続的な発射によって、その備蓄に陰りが生じている可能性がうかがわれる。また、軍用機の大量出動についても、先般来のような活動を続けていけば、早晩、航空燃料の枯渇や機体装備の損耗などを招きかねないと考えられる。結局、米韓とつばぜり合いのような活動を続けていけば、物質面で先に息切れするのは北朝鮮であることは間違いない。あるいは、米韓側は、そうした進展を見越した上で、北朝鮮に対する「挑発」を続けているとも考えられる。そうであるとすると、北朝鮮がそれに対し「当然な対応」を続けていること自体が敵の策に乗せられた愚かな行動ということになる。「天才的戦略家」である金正恩が、そこのところをどう考え、いかに対処しようとしているのかが注目される。

 最後に、このところの一連のミサイル発射はもちろんのこと談話、声明なども、これまでのところ、「労働新聞」などには掲載されていない。このことも、北朝鮮の今後の対応をうかがう上で、無視できない重要な材料の一つであろう。逆に言えば、今後、こうした動向が国内報道された場合には、大きな転換を示唆する兆候として最大限の警戒が求められよう。