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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年2月15日 金正恩の地対艦ミサイル試射及び重要軍需工場への指導を報道(訂正版)

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩の標記活動に関する記事を掲載した。各記事の骨子は、次のとおりである。

ア 新型地対艦ミサイルの試射を指導(2月14日)

  • 同行者:朴正天秘書、趙春龍秘書、金正植(軍需工業部)副部長、張昌河ミサイル総局長(陸軍大将)、金明植海軍司令官(海軍大将)、朴光摂海軍東海艦隊司令官(海軍中将)、朴成換海軍西海艦隊司令官(海軍中将)、金英善海軍副司令官(海軍少将)、東海・西海艦隊司令部のミサイル部長
  • 試験概況:海軍に装備される新型地対艦ミサイル「パダスリ(海イヌワシ)6」型の検収射撃試験。1,400余秒間、東海上空を飛行し目標船を命中打撃
  • 金正恩主要言動:「試験の結果に大きな満足の意を示し、東海・西海艦隊海岸ミサイル兵大隊の戦闘編制改編案に対して重要結論を下した」、「地対海ミサイルの力量を前進配置し、最大に強化して海上国境線を頼もしく防御し、敵海軍の冒険的な企図を徹底的に制圧、粉砕する」、「特に・・延坪島と白翎島の北方の国境線水域での軍事的備え態勢を強めることに関する重要指示を与えた」、「我々が認めている海上国境線を敵が侵犯する際には、それをすなわち我々の主権に対する侵害、武力挑発に見なすということであると断言」

 金正恩の言動は、要するに、韓国と紛争になっている「延坪島と白翎島の北方の国境線水域」付近にこの新型ミサイルを配備し、もし韓国軍艦船が北朝鮮の主張する「国境線」を超えるなら同ミサイルによる攻撃も辞さないということであろう。韓国に比して劣勢な水上艦艇戦力をこの新型ミサイルで補うことにより、同海域での韓国との勢力争いに負けまいとの姿勢を誇示したものといえよう。

 

イ 重要軍需工場を現地指導(実施日時不詳)

  • 同行者等:朴正天秘書、趙春龍秘書。出迎え:高炳現第2経済委員会委員長、工場責任幹部ら
  • 同工場に対する指導事項:「生産工程の近代化および現行生産実態を具体的に了解」、「生産工程の近代化水準を飛躍的に向上させ、生産能力の拡大を持続的に強力に推し進めていることを高く評価」し、「(労働者の勤労意欲向上に向けた)政治事業を強く展開し・・軍需生産において飛躍的な革新をもたらすべきと強調」
  • 軍需工業部門に対する指示事項:「重要中核工場(複数)が・・近代化と生産能力を絶えず拡大(し)・・第2経済委員会全体が重要な新しい計画に着手すること」について方向を提示

 同記事中には、金正恩が昨年8月に同工場を「現地指導」したとの記述があることから、同工場は、金正恩が昨年8月(3~5日)に視察したと報じられた一連の「重要軍需工場」のうちの「超大型口径放射砲弾生産工場」の可能性がある。その際、金正恩は、「新たな弾種を系列生産するための能力造成事業など国防経済事業の重要方向を提示」したと報じられていた。なお、今次現地指導の記事に添付の写真に写っている金正恩一行が見て回っているのは、「超大型口径」であるか否かは定かでないが、人の身長ほどもあるパイプ状の部品などであり、放射(ロケット)砲弾の生産工程と推測される。通常砲弾の部品のようであり、そのための新たな生産ラインを視察したとも考えられる。

 いずれにせよ、こうした通常弾頭の増産は、ウクライナの使用のためのロシアへの輸出を想起させるものであり、前述「現地指導」報道は、そうしたロシアへの協力体制強化を敢えて誇示しているようにも思える。