rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月10日社説「朝鮮労働党は一心団結の旗幟高く、勝利と栄光だけを轟かせていくであろう」

 前掲記事のとおり本日は、党の創建記念日(74周年)であり、この社説は、それを記念してのもの。前半部分は、党がいかに優れているか、勝利しつつあるかを自画自賛したものなので省略し、後半部分の今後の課題として列挙されている内容を紹介したい。

 その柱は四つで、①金日成金正日の偉大な遺産である「一心団結」を堅持していくこと、②金正恩を中心とする党と革命隊伍の一心団結を一層固めていくこと、③経済建設大進軍において一心団結の威力を発揮すること、④党組織の機能と役割を高め「一心団結」の威力と人民大衆の精神力を噴出させること、である。

 総論的に注目されるのは、「一心団結」が全項目を通じたキーワードになっていること。

 ①に関しては、金日成金正日主義の徹底を強調するにとどまらず、「党内にいかなる雑思想も絶対に侵入できないように鋭い闘争を展開しなければならない」としている。あれほど思想教育を徹底し、外部からの情報流入の遮断に努めていても、なおかつ侵入を警戒すべき「雑思想」とは具体的にいかなるものなのか。この社説だけでは判然としないが、当局としては、なにがしか想定するものがあるのであろう。問題意識の一つとして提起しておきたい。

 ②についても、「敬愛する最高領導者同志のほかは、誰も知らないという不変の信念を堅持し、元帥様を唯一中心とする全党と全社会の一心団結を瞳のように守らなければならない」として、金正恩に対する絶対的忠誠を改めて訴えている。

 これらの表現が、単にこういった宣伝文書作成の常とう句として繰り返されているだけなのか、あるいは、現在の北朝鮮体制が、ここまでして「一心団結」を強調しなければならないほどに求心力の低下を憂慮すべき何らかの状況が生じているのか、注視すべき問題であろう。

 なお、③は、現下の取り組み課題が何をおいても経済建設(相対的に軍事建設は二の次)であることを反映していると言えよう。

 ④は、党機関紙社説の主張としては、当然と言えば当然の内容で、他の様々な課題の取り組みに関する論説においても、同様の記述が通例となっている。とは言え、北朝鮮が国中に張り巡らされた党組織の機能によって、統制され、また、駆動されていることを改めて示したものと言えよう。

 ちなみに、同日には、この社説以外にも党創建記念日に関する記事が多数掲載されていたが、それらで特徴的なのは「母なる党」という言葉が多用されていたことで、国民を広く、慈愛深く包み込むといったいわばソフト・イメージの創出に腐心していることがうかがわれた。