rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月11日 利己主義的傾向が蔓延?

 昨日の記事で北朝鮮当局が懸念する「雑思想」とは具体的にどんなものなのだろうか、という問題提起をしたが、それに関連して(必ずしも、その直接の回答ではないが)、最近、注目された次の2件の論説を紹介したい。

 ① 9月25日付けに掲載された「家事の上に国事がある」

 ② 9月28日付けに掲載された「享有の権利の前に愛国献身の義務がある」

 ①は、要するに自分の家の都合や利害を公共の利害に優先させてはならない、という日本人の道徳観念からすると至極当然のことを敢えて訴える内容。ちなみに、国事の中でも最も重要なのが国防の義務とも強調しており、それよりも自分の家の事情を優先させる現象とは果たして何か。徴兵忌避ないし軍事訓練への参加の消極姿勢などであろうか。

 ②は、かつて、権利を主張する前に愛国献身の義務を果たすべく粉骨砕身した先輩がいたからこそ、今日の新世代が強国国民としての矜持を享有できていることを忘れてはならない、といった趣旨。青年層などを中心に、様々な社会的恩恵を当然のものとみなし、生活で享楽を追求する一方、社会的義務、勤労などには消極的な姿勢をとる傾向が広がっているのであろうか。

 これら論文からは、マスコミ報道などを通じて感じられる北朝鮮社会の一色化された「模範的愛国市民」という印象とは相反する、北朝鮮流にいえば「家族主義」「個人利己主義」的な風潮について、北朝鮮当局が懸念し、その是正に腐心していることががうかがえる。