rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月12日 評論「愛国は献身であり投身である」

 

 標記評論は、「敬愛する最高指導者金正恩同志の不朽の古典的労作を紐解いて」との副題に示されるように、2012年7月26日に金正恩が党中央委責任幹部に対し行った談話「金正日愛国主義を具現し富強祖国建設を推し進めよう」に関するものである。

 同談話の趣旨を一言で示せば「祖国と人民に対する熱烈な愛によって心臓を燃やされ、一生涯、祖国と人民のため不眠不休の労苦をみな捧げられた将軍様金正日)の崇高な愛国主義を積極的に従い学ばなければならず、付け加えたり削ったりせず実践活動にそのまま具現していかなければならない」ということであろう。

 その上で、「愛国(者)」の意味を敷衍して、「いかなる難関と試練の前でも躊躇したり動揺したりせず真の愛国の一路を歩む人、祖国と人民が託した革命課業を一寸も違えずその都度、誠実に遂行していく人が真の愛国者である」という。換言すると、職務に精励することすなわち、それへの「献身、投身」が愛国を具現する道であるということになる。

 そして、そのような愛国心愛国者の存在が社会主義建設の基礎になると主張する。すなわち「一つの心に固く結集したすべての人民の燃える愛国心に支えられて前進するのが主体の社会主義であり、我々の力と技術、資源で強盛繁栄を成し遂げていく巨壮な創造闘争も千万心臓で脈打つ熱烈な愛国心を原動力として力強く展開されることになる」のである。

 正直に言って、「金正日愛国主義」という言葉の意味は不可解である。この評論でも、それについて明確な説明はなされていない。推測するに、金正日愛国心に基づいて祖国のために献身したことを模範にして、我々も愛国心に基づき、社会主義建設に積極的に献身しなければならない、ということであろうか。

 要するに、具体的に求めているのは、人々が日々それぞれの職務に誠実に取組むことのようであるが、その動機付けとして、金正日の権威ないし同人に対する尊敬・追慕の念と愛国心を敢えて用いているところが、この概念の特徴といえよう。人々を動員する根拠としての愛国心の援用は、本ブログでかねて指摘してきたところであるが、ここでもそれが示されている。