rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年9月3日 政論「世の中にただ一つ 尊厳高い我が祖国の偉大さを心臓に刻んで」(9月4日記)

 

 標記政論(筆者・董泰官)は、1日付けの社説同様、9日の共和国創建記念日に向けた「愛国」ないし「我が国家第一主義」宣伝キャンペーンの一環として掲載されたものといえる。

 相当の長文であるが、要約すると、前段の「1」では、「祖国」一般についての、やや抽象的な主張を繰り返した上で、後段の「2」に至って、祖国の偉大さを金正恩の領導と結び付けつつ、本来の狙いと思われる具体的な訴えを展開している。以下、印象的な部分のみ抽出する。

「祖国は誰にでもあるが、偉大な祖国は誰にでもあるものではない」

「世間に一つしかない人民の国である我が祖国は、ほかでもない偉大な我々の首領である金正恩元帥様の懐である」

「偉大な金正恩時代を迎えて我が祖国は再び新たに産まれた」(←先代指導者との差別化)

「この地の公民であるからといって皆が祖国の息子娘であるということはできない。生のすべてが祖国と無関係な純粋に自分だけのためのものであったなら、祖国の痛みを感じたこともなく、祖国の重荷を一度も自ら肩にかけたことのない人間、祖国が風雪にさらされているとき、その屋根の下で乾いた土地と温かいオンドル部屋を求めてさまよう、そうした生であったなら、祖国も後世も歴史も絶対に記憶しないであろうし、祖国・母は、大きな痛みとやるせなさ、耐え難い侮辱を感じることであろう」(←現実には、こういう人が少なからず存在するのであろう)

「偉大な金正恩愛国精神の精華である我が国家第一主義の体現者、国家の重荷を肩にかつぎ、祖国の前進飛躍の柱となり、礎石となる新時代の愛国闘士になろう」(かつては「金正日愛国主義」と言っていた。今や「金正恩愛国精神」。代替したわけではないだろうが

 また、本日(4日)の「労働新聞」も、1面に「愛国主義を人生観化しよう」と題する評論を掲載しており、これも同様のキャンペーンの一環と言えよう。

 同評論は、「愛国的な生」は、「(各人の個別の)事業と生活の各工程と契機を通じてはっきりと表れる」ものであると主張し、「職場に対する愛がすなわち集団と同志に対する愛、自分の祖国と社会主義制度に対する愛と一つに結合し、心魂を込めた一つ一つの創造物と事業成果が祖国の尊厳と位相を持ち上げる礎石であるとの確固とした観点」を持つことがまさに「愛国主義を人生観化する」ものであるとして、その実践を訴えている。

 要するに、同評論が「愛国」というスローガンの下で訴えているのは、各人が職場での日常的な仕事を真面目に遂行することである。前掲「政論」において、「国家の重荷を肩にかつぐ」と表現したことも、実際は、これと通底しているのではないだろうか。