rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月3日 論説「今日の総進軍は全人民的な愛国闘争」

 

 標記論説は、愛国心ないし公共心という観点から「80日戦闘」への献身を呼びかけるものである。

 「国が平安であってこそ家庭も平安たり得るということは一つの常識である」として、「家庭の安寧と子供の幸福を守ろうとするなら、国を守り発展させなければならず、そうしようとするなら、各自が高い公民的自覚を持って愛国的熱情を最大に発揮しなければならない」との論法で、国への献身を呼びかけ、更に、「共和国公民であるという高い矜持と自負心を帯びて愛国の玉の汗を惜しむことなく捧げていく美しい人間、真の革命家」になるよう訴えている。

 この主張で注目されるのは、「国家の平安」を「家庭の平安」の前提と位置づけ、後者を守るための手段方法として、前者を守ることが必要との論法である。従前、「家事よりも国事を優先させる」ことを求める主張が繰り返されてきたが、今回の主張は、そのような主張では人を動かすことができないために生み出されたいわば窮余の主張とも考えられる。その背景としては、北朝鮮の人々の公共心がそれだけ希薄化している、家庭を守ることに懸命になっているという状況があるのではないだろうか。

 ただ、そのような現象があるとしても、それが果たして、巷間伝えられるような北朝鮮が置かれた「三重苦」状況に基づく生活苦の加速による「貧すれば貪する」ことの現れであるのか、あるいは逆に一定の生活水準が保障されたが故の「精神的弛緩」現象であるのかは、慎重に検討する必要があろう。前者と考えれば、話は簡単だが、個人的には後者の可能性も捨てきれないように思える。