rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月2日評論「社会主義分配原則を徹底して守ろう」(11月3日記)

 

 本評論は、10月26日に紹介した10月25日付けの評論「分組管理制の優越性を高く発揮させよう」で言及されていた社会主義分配原則、とりわけ甫田担当責任制におけるその適用について敷衍して解説している。同制度の実施は、北朝鮮の農業部門における「改革」政策の核心をなすものであり、その論旨は注目に値する。

 同評論は、「社会主義分配原則」に関連して、それが農民の勤労意欲と強く関連することを強調しつつ、「平等主義」を厳しく排撃するところから始まる。

 その上で、甫田担当責任制の実施においては、同原則の適用をより的確に行う必要があると強調し、その具体的方法に関し次のように言及している。

 「土地等級別に各農場員に穀物生産計画を正確に与え、営農物資消費と財産管理状況などを考慮して甫田担当責任制と関連した施行細則を作成し、それに従って秋になったならば生産物分配を公正に行う」

 「甫田担当者別に予算収穫高判定を正確に行うことに基づき穀物収買計画を知らしめ、彼らが自分の分配量をしっかりと知って営農作業を進めるようにしなければならない」

 以上のような記述からは、甫田担当責任制における分配(成果配分)に関して、現在大別すると二つの方面からの問題が存在することがうかがえる。

 その第一は、「平等主義」の問題である。すなわち、折角、個別の農民に耕地を分担させたにもかかわらず、個別の成果が十分に反映されない形で、皆に平等に分配してしまう傾向である。長年の「集団主義」の伝統を背景に、成果を上げた農民も自己の取り分を強く主張することがはばかられる風潮があり、各単位で、いわばことなかれ主義的に従前と大差のない分配が行われている可能性が考えられる。

 第二は、上部による恣意的な成果の収奪である。甫田担当者の「取り分」をいかに算定するかが明確に規定されておらず、あるいはその予定分が事後的に恣意的に変更(削減)されるなどの現象があるのではないだろうか。特に前者については、農作業開始前における個別具体的かつ精密な規定の策定を求める上掲の記述から、また後者については、「穀物生産計画を超過達成した単位において、各種名目で穀物を(予定より)もっと回収して農場員の生産意欲を低下させる現象がないようにしなければならない」との記述などによっても裏付けられよう。

 ただ理解しがたいのは、甫田担当責任制の文脈の中でも、的確な「労力日」の評価とそれに基づく成果配分の必要性が強調されていることである。耕地を個人に分担させるのであれば、集団労働を前提した「労力日」の概念を用いる余地はないいように思えるのだが、何故このような主張がなされているのだろうか。あるいは、甫田担当責任制に参加する農場員も、担当する甫田の耕作に加えて、他の農場員と共同での耕作にも参加するのであろうか、そうであれば、この部分は理解できないでもない。

 いずれにせよ、同評論は、各級幹部(イルクン)が自己の担当する単位において「社会主義分配原則」が正確に実施されるよう責任をもって取り組むよう求めている。甫田担当責任制は、いまだ実施の緒についたばかりであるだけに、各現場において、その適用に様々な「偏向」が生じ、結果として、農民の意欲向上という所期の狙いが十分に発揮されていないとみられる。