rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月19日 「甫田担当責任制施行のための党的指導を彼らのように行っていこう 安岳郡党委員会幹部たちの事業経験をめぐって」

 

 標記記事は、題目が示すとおり、「甫田担当責任制」の円滑な実施のために地域の党幹部がどのような指導を行うべきかを、「安岳(音訳)郡」の実例を挙げて示したものである。

 記事によると、同郡の党委員会では、そのために、「まず、甫田担当責任制の優越性に対する宣伝攻勢を集中的に展開することにした」。具体的に言うと、「特別に関心をめぐらしたことは、農業政策宣伝隊」の活動であり、当初の形式的な宣伝内容をより実効性のあるものに改めさせたという。

 「次に、甫田担当責任制の施行細則を正しくした」という。その理由は、これまで、農民が耕作条件の悪い(とされる)耕地をむしろ好んで担当したがるので、その実情を調べると、そのような土地は身を入れて耕せばそれなりの収穫をあげることができるので、結果的に得をするとの打算からであることが分かったためであるという。これに対し、党幹部は、「これは国の米壷よりも自分の米壷をまず考える誤った偏向であるから、必要な対策を講じなければ甫田担当責任制の優越性を誇示することができない」と考え、そのような傾向なくすよう細則を改めたというのである。

 耕作段階においては、「模範を創造して(それを)一般化する方法で創造と革新の火の手を起こす」という党の伝統的手法を採用したという。その場合、どの単位を「模範」とするかが問題となるが、同地では、主な幹部が「条件が一番不利な作業班を一つずつ受け持ち」、そこを指導することによって、成果を上げるよう導き、「模範」としたという。

 また、「甫田担当責任制を実施する目的は多収穫を出すことにある」のであるから、「それなら農事を科学的に行うよう指導することが極めて重要」として、「害虫被害」の防止策の徹底などを指導したことや円滑に稼働していなかった「郡愛国複合微生物肥料工場」を活用するため「該当幹部達が数百里を往来して必要な原料を確保してやり、肥料生産に支障がないようにした」ことなどが紹介されている。

 以上の記事の中で、最も注目されるのは、「国の米壷よりも自分の米壷をまず考える誤った偏向」との表現である。一般的な理解では、「甫田担当責任制」というのは、基本的に物質的インセンティブを与えることによって増産を果たそうとの施策といえようが、ここでは、そういった私益優先的な発想は否定されている。

 また、それ以外の内容を見ても、党幹部がいわば「手取り足取り」、各種の指導に努めることによって、はじめて「甫田担当責任制」が成果を発揮していることがうかがえる。この点は、以前にも指摘したことであるが、「甫田担当責任制」の本質は何か、前述のような理解でよいのかを改めて検討する必要があるのかもしれない。