rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月20日 社説「新しい土地探し運動を力強く繰り広げ、耕地面積を決定的に増やそう」

 

 「新しい土地探し運動」というのは、穀物増産を狙いとして、様々な形での耕地創出を目指した取り組みであり、金日成時代から、各地域に毎年、目標面積を割り合立てるなどの形で持続的に実施されている。

 長年そうした運動を続けてくれば、北朝鮮のような狭い国で更に「新しい土地」があるのかとは誰でも思いつく疑問であろう。標記社説は、まさにそのような発想を戒め、「探そうとする人の目には新しい土地が見えるもので、探せば探すほど出てくるのが新しい土地である」と主張して、更なる取り組みを訴えるものである。

 社説は、また、既存の耕地を熱心に耕作するだけでなく、あわせて耕地の拡大に努めるのが真の「愛国的農民」であるとして、同運動への全群衆的取り組みを促している。

 ただし、社説が取り上げる具体的な方法は、むしろ、地域当局などによる政策的取り組みによる耕地面積の拡大であり、なかでも強調されているのは干拓である。「防潮堤を築くのが容易ですぐに耕地として利用できる干潟地から開墾するのが重要である」とし、あわせて干拓済みの土地を耕地として活用するための取り組みも求めている。ちなみに、朝鮮半島の西海岸は干満の差が大きいだけに、そのような干潟地が多いようで、これまでにも、各地における干拓事業が報じられている。

 別の方法としては、「(洪水などで)流失した耕地を原状復旧し、地籍図より減少した面積の土地を取り戻す」ことや「土地整理」などがあげられている。

 同日の「労働新聞」紙上には、同社説に続けて、「祖国の財富を整えていく真の愛国者になろう」との共通題目の下、この「新しい土地探し運動」への各地の取組みの実例を報じる記事が掲載されている。

 その冒頭は、「一体となって奮い立ち、数百町歩の新しい土地を」と題し平壌市の事例を紹介する記事で、「新しい土地を開墾することのできる適地を具体的に把握」するところから始め、「水域土地(河川流域の沼地などの意味か?)と傾斜度20度以下の山林土地、丘陵などをはじめとした新しい土地予備を調査掌握」し、それらを対象として、大規模な土木工事などもいとわず「新しい土地」を創出したという。

 このほか、「ある河川の堤防を復旧して少なくない新しい土地を作り出した」金策市の例、「水保障体系さえ立てればいくらでも農耕地として利用できる土地が少なくない」との条件を活かして、「貯留池を従前の3倍に拡張して乾いた土地に水が流れ込むようにするための灌漑工事」を行い、「結果10余町歩の土地を農耕地とし」た泰灘郡城南協同農場の例、河川の整理によりその周囲の土地を農耕地として利用できるようにした沿灘郡の例などが紹介されてい(地名は音訳)。

 日本でも、戦後、米増産のために八郎潟干拓して巨大な農地を創出したし、更に遡れば、溜め池などの灌漑施設の整備などにより農耕地を創出する取組みが、昔から営々と続けられてきた。「ポツンと一軒家」というテレビ番組でも、山の中に住む人が、周囲の田んぼは先祖が山中を開墾したものであるなどという話が紹介されることもある。日本では、今や「コメ余り」でそのような努力は忘却されがちであるが、北朝鮮では、今まさにそのような努力がなされているのであろう。

 ただし、そのような取り組みは、環境破壊や災害に脆弱な耕地を造成する可能性をはらむものでもある。とりわけ、「目標貫徹」を強調しすぎた場合、そのような弊害が出やすくなると考えられる。北朝鮮でしばしば、自然災害による深刻な被害が報じられるのは、単なる偶然ではなく、そのようなことの結果でもあるのではないだろうか。