rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月10日 社説「真似て先に立つ、真似て学ぶ、経験交流運動をより活発に展開しよう」

 

 標記社説は、「真似て先に立つ、真似て学ぶ、経験交流運動」という名の大衆運動への取り組み強化を訴えるものである。北朝鮮の大衆運動は、これまで「3大革命赤旗獲得運動」が基軸となっていたが、同社説は、それに並ぶものとしてこの運動を位置づけようとしているようにみえる。

 同社説は、まず、「真似て先に立つ、真似て学ぶ、経験交流運動」とはいかなるものかについて、「見本を創造し、その模範を一般化して革命と建設全般に絶え間ない昂揚を起こしていくのは、朝鮮労働党固有の事業方法である」(「固有」というのは言い過ぎであろうが、得意の戦術であることは間違いない)とした上で、それを更に進化させた、「典型を創造し一般化する方法と集団的競争を有機的に結合させた新たな大衆運動である」と説明している。

 そして、それを今日実践すべき必要性の根拠として、「我々の力で、我々式で社会主義建設全般において飛躍的前進を成し遂げるための現実的要求である」ことをあげる。要するに「自力更生」実現のための有力な方法であるということであろう。

 次に、同運動展開の効用として、経済的効果に加え、「すべての人民を熱烈な愛国者共産主義的人間として育てる上で大きな意義がある」ことをあげる。

 つまり、「(同運動展開の)目的は、社会主義建設全般を皆一緒に速い速度で発展させようというところにあるが、更には、この過程を通じて我々の勤労者を革命的で健全な精神道徳的風貌と高い技術実務能力、集団主義生活気風を体現した社会主義建設の真の主人として育てるためである」という。同運動が「人材と科学技術によって推動される競争運動である」ことを強調し、「幹部の政策的眼目と技術実務能力」の向上に努めるべきことを訴えているのも、そのような目的に即したものと考えられる。

 このほか、同運動を進める上での「障害物」として、「機関本位主義」を挙げ、世界が日進月歩する今日、「自分の単位の利益だけを追求して先進的経験と技術を共有しないことは時代錯誤的な行為」と戒めている。

 なお、同社説は、本ブログが先般来指摘してきた金正恩の「強国」構想にも、次のとおり言及している。

 「我が党の決心は、今後の5年を歳月を繰り上げて江山をもう一度大きく変貌させる大変革の5年になるようにし、次の段階の巨大な闘争を連続的に展開して、すべての人民が幸福を享受する隆盛繁栄する社会主義強国を打ち立てようというものである」

 同社説は、「「真似て先に立つ、真似て学ぶ、経験交流運動」を、この「強国」構想実現のための方法論として(改めて)位置づけたものということができるのかもしれない。