rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月11日 論説「敬愛する総秘書同志の思想と領導を正直に奉じるわが人民の革命的風貌」

 

 標記論説は、5月7日の本ブログで紹介した同日付論説と同様、金正恩を事実上、首領に位置づける論理を展開するものである。

 まず、「首領に対する忠実性を第一生命として堅持する人民だけが革命の道を屈することなく進むことができる。首領に対する忠実性の熱度こそ、革命の前進速度である」とした上で、「去る10年間は、わが人民が敬愛する金正恩同志の絶世の偉人相を実生活の中で体感し、総秘書同志に対する絶対的な崇拝心を胸に固く堅持した日々であった」と主張する。

 次に、「偉大な首領を奉じた人民のように幸福で誇り高い人民はいない」とした上で、「今日、敬愛する総秘書同志の思想と領導を忠実に奉じていく我が人民の革命的風貌は、社会主義建設の新たな勝利を成し遂げるための総進軍に余すところなく誇示されている」と主張する。

 更に、「首領の構想と意図は革命と建設を勝利的に前進させていくための百勝の戦略と戦術である」とした上で、「敬愛する総秘書同志の決心は科学であり、真理であり、勝利である」と主張する。

 そして、最後に、「すべての部門、すべての単位において敬愛する総秘書同志の不滅の業績を固く擁護固守し、限りなく輝かせるための事業を進攻的に展開してこそ、我が革命の前進を一層加速化していくことができる」として、金正恩の思想、構想の実現に向け一層力を尽くすことを訴えている。

 同論説は、もちろん金正恩を直接に首領と論断するものではなく、いわば近似的に論じたものであるが、そうした言説を繰り返すことによって、そうした論断が社会的に受け入れられるよう、土台作りが図られているのではないかと考えられる。

 ただし、現在のところ、「首領ニム(様)」というのは、金日成だけを指す表現になっている。仮に、金正恩イデオロギー的次元において公式的に首領に位置づけたとしても、彼を「首領ニム」と呼称するかは、また別問題であろう。