rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月18日 論説「社会主義生活様式確立の重要性」

 

 本論説は、北朝鮮指導部が腐心する課題の一つである社会紀綱引締めの一環といえる。

 これまで本ブログでは、その種論調に関して、主に、問題とされている否定的現象についての言及を紹介することによって、今、北朝鮮社会で現実に何が起きているのかをある程度、浮き彫りにすることができたのではないかと自負している。

 そこで、本論説に関しては、逆に北朝鮮指導部がそのような思想宣伝を通じて人々がどうなることを望んでいるのか、この論説に即していうならば、「社会主義生活様式」とは、具体的にどのような生き方を指しているのかに焦点を当ててみたい。

 論説は、まず、「社会主義生活様式は、社会主義社会に住む人々の固有な活動方式であり、生活方式である」というが、これでは抽象的過ぎて実体がまったく見えてこない。

 別の部分では、「高尚で健全な文化が溢れ、人々の間に互いに(相手の)ためにしてやり大切にする社会的雰囲気が立っている社会が人民的な社会、進歩的な社会」であり、これと対照的に「腐って空洞化した思想文化と個人主義的思考方式が支配する社会は反動的な社会」であると述べている。

 更に、「全社会が徳と情で結合され、自分式の創造方式、生活方式を固守していく国、まさにここに世間で最も優越した我が社会の真の姿がある」とも主張している。

 その上で、「社会主義生活様式を確立する事業は、我々の思想、我々の精神、我々の文化を固守し輝かしていく事業であると同時に、すべての人々を高尚な精神道徳的風貌と高い文明水準を帯びた社会主義建設の力強い担当者として育てる事業である」と主張している。

 結局のところ、同論説は見てのとおり、「社会主義生活様式」について、余り具体的な言及はしないで終わっている。むしろ、引用は省略したが、それを欠いた場合の弊害について繰り返して強調している。

 しかし、前述のようないくつかの表現から、北朝鮮が望む「社会主義生活様式」の基本的特徴を類推すると、概ね次の二つの要素に集約することができよう。その第一は、「高尚性・健全性」である。これは「退廃的文化」の反対概念であり、具体的に言えば、ジーンズ、長髪、ロック歌謡などに象徴されるような西側文化に染まらないという意味であろう。第二は、「利他性」すなわち他人に対する親切・思いやりと「公共」の尊重であり、いうまでもなく「利己主義」の反対概念といえよう。「家事よりも国事を優先」といった考え方もこれに含まれる。また、前掲の「高い文明水準」も、社会秩序尊重を示すと考えられ、この範疇に含まれよう。

 これらを総じて言えば、人類普遍ともいうべき伝統的な「醇風良俗」と大差ないということになり、敢えて「社会主義」を冠する必要もないように感じるが、ここで「社会主義」というのは、「優れた」とか「立派な」という意味の修飾語として用いられていると考えるべきなのであろう。