rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月2日付け社説「新年課業貫徹に拍車を加え今年度戦闘を輝かしく結束しよう」(11月5日記)

 

 掲載から少し間が開いてしまったが、標記社説を紹介したい。

 内容は、見てのとおり、11月に入ったことを受けて今年もあと2か月、新年に際して立てた各部門・単位の年間計画を年末までに必ず達成すべく頑張ろうと呼びかけるものである。

 経済各部門ごとに、当面重点的に取り組むべき目標を列挙しており、そこから北朝鮮指導部の各部門に対する優先度ないし現状認識などをうかがうことできよう。

 筆頭に掲げられているのは、電力・石炭部門で、「生産潜在力を最大限発揮し、増産闘争の火の手を強く燃え上がらせ、当面して冬季電力、石炭生産を正常化するための対策を実質的に立て」ることが求められている。要するに、これら部門では、既存の能力を十分稼働させることができず、その100パーセント稼働が喫緊の課題になっているのであろう。

 電力及びその燃料となる石炭については、このところしきりに増産を訴える記事が掲載されており、その供給不足が経済運営全体のネックになっていることがうかがえる。とりわけ冬季には降雨量の減少により水力発電の生産低下を見込まざるを得ないことから、石炭増産の必要が高まっているのであろう。

 次に挙げられているのは鉄道運輸部門で、輸送量増加により、「人民経済各部門、単位において今年の戦闘(生産)を輝かしく結束できるよう積極的に貢献」することが求められている。

 実は、以前から電力・石炭・鉄道運輸の3部門の不振は、相互に絡み合って悪循環をなしていると言われてきた。すなわち、石炭採掘の現場では電力不足のため排水などが円滑に進まず採掘に支障をきたす、大半が電化されている北朝鮮の鉄道部門は電力不足により列車を円滑に運行できないため折角採れた石炭を発電所に迅速に輸送できない、結果、火力発電所では燃料不足が慢性化し電力生産が一層低下することになる。

 そして、この電力ないし石炭の不足及び輸送の停滞は、他の多くの経済部門において、エネルギー不足及び原材料の供給遅延を起こし、既存生産施設の稼働率低下を招くことになる。これがかねて指摘されてきた北朝鮮の経済不振の基本図式であるが、本社説の課題設定の順序は、まさにそのような構造的問題が相変わらず存在していることを反映するものと言えよう。

 ただし、留意すべきは、このような電力・エネルギーの不足現象が絶対的なものなのか、あるいは、経済の全体的規模が拡大する中で生じているものなのか、ということである。前者であれば、北朝鮮経済の相変わらずの停滞を示すものと言えるが、後者であれば、それはいわば「成長痛」のようなものということになる。この問題は重要であり、今後の検討課題としたい。

 以上の3部門に続くのは、建設部門であり、年内完工予定の施設を「最上の水準で仕上げるための総突撃戦を展開」するよう求めている。ここで敢えて「最上の水準で」と強調しているのは、期限内達成を目指す余りのやっつけ仕事を繰り返し批判している金正恩の指導方針を反映したものとも考えっれる。

 最後に挙げられているのは農業部門で、脱穀作業をしっかり行い、「国家穀物収買計画を無条件で遂行」するよう求めている。農業部門が最後に掲げられているのは、既にあらかたの作業が終了してしまったためであろうが、それでもこの表現からは、国家への上納分は何としても確保しようとの強い意志がうかがわれる。

 以上各部門の課題を紹介したが、各部門は今後2か月間でそれらを達成できるのであろうかとの疑問が自然と湧き上がってくる。しかし、北朝鮮流には、「できるか、できないか」ではなく「いかにやるか」の問題と考えるべきなのかもしれない。しかも、本人以外他の誰も助けてはくれない(自力更生)、各単位が上下一丸となっての奮闘あるのみ、ということになるのであろう。今後年末までの2か月は、北朝鮮国民にとって誠に厳しい苦難の時期となりそうである。