rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月19日 金正恩朝鮮人民軍8月25日水産事業所と通川魚加工事業所を現地指導

 

 また、金正恩の雷が落ちた。標記記事によると、「人民武力省に各部署があり、たくさんの将軍佐官が座っているが、誰も党において関心を持つ(8月25日)水産事業所において計画された対象建設が不振状態であることを報告した人はいなかった」ためである。彼は、自らそれを知り状況を直接把握しようと同事業所を訪れたというのである。そして「このような問題まで最高司令官が把握し現地に出向いて対策を立てなければならないというのが現実であり、もどかしいことだ」と鬱憤を吐露し、更に「自力でこれといった対策を立てられないのに党中央に懸案の問題一つもまともに正確に報告しなかったのは、総政治局と(人民)武力省が犯した失策である」と述べたという。

 このような批判の趣旨は、10月27日に報じられた医療器具工場指導の際の批判とも通底するものである。すなわち、金正恩の怒りは、建設の遅延や不出来そのものではなく、それを座視し傍観していた幹部の姿勢に向けられている。何故、そのような問題の発生を自分だけで抱え込まずに党中央(=自分)に報告し助力を仰がなかったのか、という不満であろう。彼の考えを更に推測すれば、そのような態度は、そのような報告をして不評を買うのを避けようとしたため、つまり自己の保身のために革命の進展を蔑ろにする行為ということになる。

 他方、金正恩が望ましいと思うのは、「欲がとても大きいため、毎回、最高司令官にこれをしよう、あれをしようと多くのことを提起する」同事業所の支配人で、「本当に見つけることが容易でない幹部である」と絶賛している。

 要するに、金正恩は、自ら積極的に大胆な課題を提起し、それに挑戦する幹部を求めているのだが、多くの幹部は失敗を避けるあるいは糊塗することに終始しているのが実情なのであろう。ただ、幹部にとって失敗のコストが余りに過酷(地方の労働者への転出、甚だしくは銃殺刑?)な状況に変化のない限りは、金正恩がいかに叱責を繰り返しても、そのような態度の是正は期待できないのではないだろうか。