rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月20日 政論「主体朝鮮の絶対兵器」

 

 勇ましい題名である。読者諸氏は、それが何を指すとお考えだろうか。「核兵器」あるいは最近開発中の短距離弾道ミサイルを想起されるかもしれない。しかし、少し北朝鮮と付き合いのある人間なら容易に想像できるように、答えはそれらとはまったく異なる次元にある。

 「我々の政治思想的威力である党と革命隊伍の一心団結、混然一致こそ限界のない世界唯一無二の絶対兵器」なのである。そういう意味で、この政論は格別新味のないものとも言えるが、それにせよ、その宗教者の語り口を彷彿させる表現ぶりには、改めて驚きを禁じ得ない。長文のものだが、さわりの一節だけ紹介したい。

 「信じればいかなる試練も苦痛、更には死さえも克服することができ、信じるのも心から信じれば必ず成功と勝利と幸福の絶頂に至る。

 首領を信じよ!

 党を信じよ!

 これは、偉大な朝鮮人民の科学だ。」

 このような論調を生み出す考え方と11月15日付け記事で紹介した評論「唯一の基準―実践」で示された「実践は、思想精神の反映であり、その結果である」「今は熱誠一つを持ってしては党に忠実たりえない」といった考え方とはどのような関係にあるのだろうか。

 単純に考えれば、北朝鮮内部では、思想重視の保守派と実績重視の実務派とか競合ないし併存しているという仮説が成り立ちうる。

 しかし、思想と実務とを必ずしも矛盾したものとは考えず、むしろ相補い合って機能させようとの戦略の下、各部門ないし各人が役割を分担しつつ、全体として双方向の主張を展開していると考えることも可能であろう。

 私は、どちらかというと後者ではないかとの印象を持っているのだが、仮にそうであったとしても、二つの要素のバランスについては、人によってあるいは部門によって、濃淡がある可能性までは否定できないのではないだろうか。特に本政論のような論調を読んでしまうと、そのような感を強くする。

 15日付け評論を書いた労働新聞記者・崔英吉(音訳)氏は、今日の政論を読んでどう感じるのか、逆に本政論の筆者・董泰官(音訳)氏は、15日の評論を読んでどう感じたのか。是非、ご両人に直接お目にかかり率直な感想をうかがってみたいものである。