rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月16日 政論「百折不屈の革命家になろう」

 

 標記政論は、方城華(音訳)によるもの。「百折不屈」という言葉は、このところ頻出するキータームの一つといえる。

 長文多岐にわたる同政論の趣旨を大雑把に要約すると、「1」で過去における「百折不屈」の実例を挙げて、それが朝鮮の伝統的気風であることを強調した上で、「2」で今日それを更に継承発揮していくべきことを訴えている。以下、それぞれの部分で印象的な部分をかいつまんで紹介したい。

 まず、「1」では、北朝鮮の歴史上での様々な困難な局面を回顧し、「血涙の丘を越えて10年、歩んできた道を振り返る我々の胸に大きな自負と矜持があふれる」と主張する。同政論は、この「血涙の丘」という表現を繰り返しており、これまでの道のりが苦戦の連続であったことを印象付けている。

 その上で、「金正恩同志、その方を陣頭に奉じて押し寄せてきた我々の誇り高い10年に題名を付すならば、『偉大な一路-百折不屈』となるであろう」として、「百折不屈」の趣旨を説明している。

 次に「2」では、そうした実績を根拠に、「千万(人民)が運命の太陽であられ、百勝の旗幟であられる敬愛する総秘書同志に対する熱火のような忠誠心をより深く堅持し、その方が導かれるただ一路だけを進むこと、まさにこれが革命の新たな勝利のための根本担保であり、この地の明るい未来を促進する最高の愛国である。皆が敬愛する総秘書同志の周囲により固く結集して一心団結の威力で社会主義建設の新たな勝利を一日も早く迎えよう」と呼び掛ける。

 そのような訴えの対象は、まず幹部に向けられ、「自分一人の保身と安逸から考えて、試練に前に動揺し、難関の前で躊躇する幹部は、事実上革命のブレーキに過ぎない」と戒め、特段の奮発を求めている。同時に人民すべてに「百折不屈」が必要であるとも主張し、文末では、「皆が敬愛する総秘書同志にしたがう道において百折不屈の革命闘士になろう」と結んでいる。

 以上のような主張からは、「百折不屈」という新たなタームを用いても、その訴えるところは、結局のところ、現状がいかに困難であっても金正恩に対する絶対的信認・無条件服従の姿勢を堅持しなければならない、それこそが「新たな勝利」の最大・最重要な担保・条件である、それを動揺させあるいは放棄するのは敗北に至る道でしかない、という従前同様の主張であることがみてとれる。

 ちなみに、昨日(15日)の「労働新聞」は、冒頭に党幹部は、歌謡『党よ、君がいるから』を常に心の中で歌い、人民の前で自己の事業の総括を受けよう」と題する長文の評論を掲載した。同評論は、この歌謡の歌詞を全文引用しており、先般来の「音楽政治」の新たな展開としても注目されるもので、「運命と未来をすべて託した偉大な母なる党に対する人民の無限の信頼心がこの歌の一節一説に熱く脈打っている」としている。同評論は、その上で、幹部は、この歌を胸に刻み、そうした人民の期待・信頼に現実的成果をもって報いなければならない(「人民が実際に望み待っている結果を成し遂げることによって、自らの党性、革命性、人民性を検証されなければならない」)と訴えている。

 こうした訴えの重要な理由の一つが、「人民は、党中央の尊厳と権威、母なる党の愛と信頼を党幹部の事業方法と作風(活動姿勢、態度)を通じて実際に感得する」という現実であろう。これを換言すると、幹部が人民の期待する具体的成果をあげることができなければ、「党中央の尊厳と権威」が損なわれるということになる。そして、おそらくは、それが今日の現状なのであろう。前掲の「百折不屈」の訴えも、また、そうした現状を踏まえて打ち出されたものと考えられる。