rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月29日 「第一も第二も第三も質、これが人民の要求である―第9回全国酒及び基礎食品展示会を見回って」(11月30日記)

 

 11月26日の記事で開催を紹介した標記展示会会場の状況を紹介する記事である。

 記事の標題からも明らかなとおり、同展示会の基調が製品の質の向上及び多様化にあることがうかがえる。記事中にも「このたびの展示会は、人民消費品の質に対する人民の要求が前例なく高まっている中で開催されている」と解説されている。

 なお、同展示会の主催は、内閣の地方工業省であり、出品しているのは、中央政府の直接指導下にある大型国営企業所ではなく、各地の地方政府の指導下におかれた、いわば中小の企業所である。同展示会は、それら地方企業が各地の特性なども生かしつつ開発・製造した独自製品の「質」を競う場となっている模様である。

 したがって、それら製品は、いずれも基本的に中央から原料供給などで特段の支援を受けることなく、地方の独自努力(「自力更生」)で生産され、かつ、各地方の住民に供給されているものと考えられる。

 なかでも印象的なのが酒類生産に向けた熱意で、ビールをはじめ伝統酒まで、多様な製品の生産が奨励されていることがうかがわれる。

 同記事に示されている「質」の追及、酒類の生産多様化などの状況は、世間に広まっている「北朝鮮=食糧不足」のイメージとはまったく相反するものと言わざるを得ない。もとより記事の内容には、多少の美化・脚色もあろうが、だからと言って、それが国内で広く読まれる労働新聞紙上に掲載されている以上、現実とまったくかけ離れた宣伝とも考えられない。仮にそのような報道を行えば、住民の反発など逆効果のほうがはるかに大きいと考えられるからである。

 国際機関などによる「北朝鮮での食糧不足」推計と、このような現状が果たしていかに説明されるべきなのか、大いに悩むところである。