rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月22日 「山林復旧及び国土環境保護部門イルクン会議開催」

 

 標記会議が1月21日開催されたとの記事。記事自体は、比較的簡略で、会場の写真なども付されておらず、軽い扱いと言える。

 しかし、会議には、金才竜総理はじめ金徳勲党副委員長、李竜男副総理、金正官人民武力相らが出席しており、環境保全に本腰を入れて取り組もうとの姿勢がうかがわれる。もちろん、これは、先の中央委員会会議の決定の一つとして、「質の重視」などとあわせて自然災害防止・生態環境保全などが取り上げられたことの延長線上の動きであろう。ここで注目されるのは「人民武力相をはじめとした武力機関イルクン達」の出席が報じられていることで、軍がこの問題で重要な役割を果たしていることを示したものと考えられる。

 会議運営においても工夫がうかがわれる。すなわち、「まず、昨年の山林復旧戦闘と国土管理総動員事業の状況を収録した多媒体編集物の視聴」がなされたという。「多媒体編集物」がどんなものなのか判然としないが、いずれにせよ、少なくとも、このクラスの会議においては、異例の運営形式と言えるのではないだろうか(通例であれば、当該部門責任者がまず「報告」を行い、その中で昨年度総括などに言及)。

 また、それに続く「討論」では、「昨年の山林復旧戦闘と国土管理総動員事業において現れた偏向(問題点)」、具体的には「幹部が山林復旧戦闘と関連した作戦を下の人々にだけ放任する問題、一部単位において住宅、公共建造物、道路の管理と補修をまともに行わない問題、河川汚染問題をはじめとした一連の欠陥」などが分析総括されたとされる。

 「労働新聞」では、これまでも、地球温暖化生物多様性確保、ビニール樹脂汚染など環境をめぐる様々な記事がしばしば掲載されていた。それらは、もちろん、国際的な、あるいは外国における問題として紹介されており、国内におけるその種問題に関する事実報道は皆無であった。ただ、実際には、その背景で前述の「欠陥」として指摘されたようなものも含め多くの問題が発生していたとも考えられる。金正恩は、執権当時から「植林・緑化」などに熱心であったと言えるが、「山林復旧」という表現からは、むしろ山林の荒廃が進んでいる状況すらうかがえる。前述のような中央委員会会議での決定及び本会議開催などの動きの背景には、そういった問題・状況に対する指導部の危機感が存在すると考えられる。