rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月8日 評論「今日の正面突破戦において基本戦線は経済戦線」

 

 標題の文言は、先の中央委員会会議における金正恩の「報告」の中で述べられたものであり、この評論は、何故そうなのかを改めて整理したものである。ここで、その理由としてあげられているのは次の3点である。

 第1点は、「まず、経済戦線が敵対勢力との最も熾烈な対決場であるため」である。これは、本日の社説でも主張されているとおりなので、詳細は省略する。

 第2点は、「経済分野において至急に決定的対策を立てるべき問題が山積していること」である。しかし、その「問題」については、「国家経済発展を甚だしく阻害する非正常的で不合理的で散漫な現象」として、重大性が強調されるだけで具体的な言及はない。「過去の時期の過渡的で臨時的な事業方式を引き続き踏襲する必要はない」との主張についても、「過去の時期の過渡的で臨時的な事業方式」が何を指すのかは明らかにされていない。あるいは、具体的・実体的な制度などではなく、精神的な風土、姿勢などを示している可能性もあるが、いずれにせよ、今後注視が必要な点である。

 第3点は、「経済分野における成果がその他の戦線における成果を後押しするため」である。どういうことかと言うと、「経済部門と社会生活領域において他国の物品が多く入り込み、人々がそれを使うことに慣れてしまえば、どうなるのか。いかに思想教養事業を強力に展開しても自分の経済的潜在力を信じなくなり、他国に対する幻想と依存心が芽生えることとなり、社会主義の優越性に対する確信と守護精神が崩れ去ることになる」からである。逆に、経済部門を振興できれば、そのような事態の出現を防止し、思想的統一団結を強化する上での基盤になるということであろう。

 なお、ここで気になるのは、「他国」とはどこかということで、「物品が多く入り込み」という表現からは、中国を挙げざるを得ない。「敵との対決」という表現からは、米国ないし韓国を連想しがちだが、その一方で、中国に対する「幻想と依存心」への対応も念頭に置かれているとするなら、北朝鮮の「正面突破戦」についての見方も、より多角的なものであることが求められよう。

 いずれにせよ、以上のような理由から、「正面突破戦の基本戦線は経済戦線」なのであり、更にその中心的な課題は、体制に内在する旧弊の除去・改革であると考えられる。そして、本評論に、別稿で紹介した本日付け社説の内容なども加えて勘案すると、そのような改革の原動力(あるいは狙い)となるのは、人々の「意識改革」というになる。それがまさに金正恩が目指していることであろう。

 であるとすれば、対外関係において、いかに強烈な言辞を弄しようとも、それは人々の覚醒を促すためのものであって、現実に取り得る行動には、自ずと限界があるのではないだろうか。米国が先に手を出さない限り、北朝鮮がある日突然、イランのようなミサイル攻撃を始めるなどという可能性は皆無と言って過言でないと思う。