rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月26日 社説「強力な思想攻勢で正面突破戦を力強く推動していこう」

 

 標記社説は、思想教育の重要性を強調するものである。その点は毎度のことで新味はないので、思想教育の重点をどこにおき、いかに進めるべきかを論じた部分に絞って紹介したい。

 社説は、今日の思想教育の重点課題として2点をあげている。その第一は、「忠実性教育」であり、それは「党思想事業部門の前に提起された最も重要な課題である」とされる。

 その具体的内容については、総論的には、「党員と勤労者たちの中に首領の偉大性を深く体得させ、党に対する忠誠は、すなわち最も熱烈な愛国となるということを植え付けるための教育事業を原理的に深く行な(う)」ことを求めている。一方、各論的には、「皆が情勢と環境がいかに変わったとしてもひたすら敬愛する最高指導者同志だけを絶対的に信じ付き従おうとする透徹した革命信念、最高領導者同志がおられるから主体朝鮮の未来は明るく燦燦としているとの革命的楽観、党の領導にしたがって社会主義強国建設の勝利を必ずや成し遂げようとの決死の覚悟を持つことに基本を置く」ことを求めている。

 ここで前者は、いわば建前であり、今、切実に党指導部が必要性を感じているのは、後者であろう。現実には、そういった信念・楽観・覚悟が不足しているということの反映と考えられる。

 重点課題の第二は、「社会主義経済建設を成果的に推し進めることに思想事業の火力を集中」することである。そのための方策として、「党員と勤労者に党の経済政策を深く解説してやるとともに、現実において懸案となっている問題と隘路を革命の前に直面する難関、我が世代に必ず行うべき重大な時代的課題と結び付けて説得力をもって教えてやり、彼らすべてが非常な覚悟を抱いて正面突破戦に奮い立つようにしなければならない」などと主張する。ただ、ここで主張されていることは、要するに懸案する問題への真剣な取組み意欲の喚起であり、前段で強調された「覚悟」と事実上同じことを繰り返しているようにも感じられる。

 なお、思想事業推進上の留意点として強調されているのは、「思想事業において形式主義を徹底して無くすこと」である。その具体的内容については、これまでにも紹介してきたところと大差ないので割愛する。

 結局のところ、思想教育の課題として掲げられている点から遡って推測すると。すべての問題が金正恩に対する人々の信認に集約しているようにも思われる。それが揺らいでいるから、彼(=党)の提唱する経済目標について、実現可能との確信が持てず、当然、貫徹の意欲も鈍りがちで、何か問題・隘路に逢着するとそこで立ち止まってしまう、といった状況が想起される。

 もし、大衆の意識状態が以上のような状況であり、一方、幹部層はかねて指摘しているように官僚主義・守旧姿勢を払拭できずにいるとするなら、「正面突破戦」の前途が「燦燦」としたものになるとはなかなか期待しがたいように思われる。あるいは、それだからこその「正面突破戦」発起であると言うべきなのかもしれないが。