rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月29日 金正恩が「人民軍部隊の合同打撃訓練を指導」

 

 金正恩が2月28日、標記訓練を指導した旨を報道。訓練実施場所への言及はないが、韓国報道では、「元山付近」であるとのこと。「党中央委員会の幹部たちが訓練を参観」し、金正恩を「現地で、朝鮮人民軍指揮メンバーたちと訓練に参加した大連合部隊指揮メンバーたちが出迎えた」とされる。個人名への言及はない。

 訓練の実施目的は、「前線と東部地区防御部隊の機動と火力打撃能力を判定し、軍種合同打撃の指揮を熟練すること」であり、参加したのは、「前線と東部地区防御部隊、海軍、航空及び防空軍の将兵」である。

 以上の報道を総合すると、前線及び日本海側に位置する軍団の砲兵部隊の機動・射撃及びそれら部隊と空軍・海軍との統合運用についての訓練であったと考えられる。添付の写真は、海岸に並べられた大量の火砲、自走砲、ロケット砲などが連続的に射撃している光景を示している。目標は沖合の島である。

 なお北朝鮮では、昨年5月4日及び9日に、それぞれ前線・東部防御部隊及び前線・西部防御部隊が、いずれも金正恩指導の下、「火力打撃訓練」を実施している。ただし、昨年は2回とも様々な短距離ミサイルが発射されているが、今回は火砲のみの発射であったこと、他方、昨年は陸上部隊だけであったが今回は空軍・海軍との合同であったところが異なる。今次訓練については、ミサイルを飛ばさなかったという点で、対外的なインパクトを抑制したと言ってもよいのではないだろうか。

 ちなみに、昨年2月27日、28日は、ベトナムハノイ米朝首脳会談が行われた。今次訓練は、まさにその1周年に実施されたことになる。偶然とは考えにくい。以下は、まったくの推測であるが、今次訓練では、本来、何らかの「戦略兵器」ないし昨年同様のミサイル類が登場することが予定されていたのかもしれない。しかし、米韓が直前になって「コロナウイルス感染症」を名目として、予定されていた合同軍事演習の事実上の中止を決定・公表したために、急遽、前述のような規模にとどめたのではないだろうか。ただし、昨年は、前述のとおり、東西で同種の訓練を連続的に実施しており、今年も、今後近いうちに西部(黄海側)で実施されるおそれも否定はできない。本日付け前掲記事の党内粛清の動きもあり、北朝鮮の内外動向には、当分、目が離せない。