rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月16日 社説「白頭山地区革命戦跡地踏査熱風が奇跡創造の火の手として燃え上がるようにしよう」

 

 標記社説は、冒頭で、現在、白頭山への踏査行軍が盛大に実施されているとし、同活動に、「昨年12月から今年2月までの期間だけで全国的に5万名に達する幹部と党員と勤労者、人民軍将兵と青年学生たち」が参加したとしている。ただし、2月13日に掲載された記事でも、既に参加者数は「5万名」との数字が示されていた(同日付け本ブログ参照)。このとおりとすると、2月中・下旬は、新型コロナウイルス対策などで踏査活動が一時的に停止状態になったのであろうか。あるいは、単に数字がいい加減なのか。

 いずれにせよ、社説の主張は、そのような踏査行軍活動を通じて参加者が追体験した厳寒下での抗日闘士の苦闘、そこで得た気概をそれぞれの平素の活動に反映させようというものである。すなわち、踏査行軍活動を「いかなる逆境の中でも屈しない堅実な闘士として育てる革命的鍛錬の爆風」としていくことを訴えるものである。

 ただ、そこで引用された金正恩の言葉は、次のようなものである。

「すべての幹部は、我が党の革命伝統を言葉でだけ唱えるのではなく、抗日革命闘士たちの革命精神と闘争気風を模範として事業と生活に徹底して具現しなければなりません。」

 この引用文からは、金正恩の主たる関心が「幹部」に向けられていることがうかがわれる。

 そこで、社説中の幹部に向けられた主張を見ると、まず総論としては、「幹部が白頭山精神を具現していく上で旗手にならなければならない」としているが、具体的に示された要求は、次のようなものである。

・「偉大な首領様と偉大な将軍様に似た堅実で有能な政治活動家として自らを徹底して準備し(=鍛え、の意)なけれなければならない。」

・「抗日遊撃隊指揮官のように『進もう、進もう』と言いつつ隊伍を先頭で導いていく先鋒闘士、常に大衆と同じ釜の飯を食べ、集団のためにすべてをみな捧げる熱血の人間にならなければならない。」

・「いついかなる環境の中でも『魚が水を離れて生きられないように遊撃隊が人民を離れて生きることはできない』とのスローガンを座右銘とみなし、人民の生命財産を命を捧げて保衛した革命遊撃隊員たちの模範を見習い我が党の人民大衆第一主義政治を徹底して具現していかなければならない。」

 以上のような幹部向けの要求は、基調としてして示された「逆境にも挫けない」との要求とはいささか趣が異なるもので、明らかに「人民への奉仕」に力点が置かれているといえる。

 今、北朝鮮の幹部が何を最も強く求められているのかを端的に示しているのではないだろうか。