rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月14日 評論「革命隊伍の一身団結を強化する上で提起される重要な問題」

 

 標記評論は、政治局拡大会議以降の官僚主義批判キャンペーンの一環であるが、「官僚主義」の具体的表現が従前以上に露骨であるので、敢えて紹介したい。

 評論は、まず、「官僚主義」が体制そのものに及ぼす危険性について、「社会主義執権党が幹部たちの中において権柄と官僚主義、不正腐敗を許容することは、自らの墓を掘ることと等しい」と指摘した上で、その理由を次のとおり説明する。

 「幹部たちの権柄と官僚主義、不正腐敗行為は決して格式を張って号令を掛け享楽と致富を蓄積することだけで終わらない」。「幹部が人民が付与してくれた権限を人民のために用いず、むしろ人民を粗末にし、人民に号令し、甚だしくは人民の財産に手を出し私利私欲を追求することに盗用するなら、・・・人民の利益が侵害されるのはもちろんであり、党に対する人民の信頼が失墜することになる」からである。

 そして、「社会主義建設の歴史的教訓」として、「過去、様々な国で社会主義執権党が崩壊し社会主義が挫折したのは、幹部が権柄と官僚主義、不正腐敗行為をこととしたため党が人民大衆の支持を失ったことに重要な原因がある」ことを想起させている。

 以上のような幹部の官僚主義的態度・不正腐敗→人民の党への信頼失墜→社会主義体制の崩壊危険性高揚という図式は、これまでにも繰り返し示されてきたところであり、驚くには当たらない。それは、北朝鮮指導部内の共通認識となっているみて間違いないであろう。

 本評論の注目点は、その不正腐敗の例として、「致富を蓄積」「人民の財産に手を出し私利私欲を追求する」ことをあげていることである。ここで「人民の財産」というのが国有物資や協同農場の財産などを比喩的に述べた表現なのか、あるいは人民個人が所有する財産という意味なのかは判然としないが、いずれにせよ、幹部の不正腐敗が職権乱用を通じた財産蓄積に至っていることをかなり明白に示したものといえる。

 北朝鮮幹部の抱える問題は、単なる執務姿勢の守旧性、独善性などにとどまらない(それはそれで重大・深刻な問題であろうが)、旧王朝時代を彷彿とさせるような私財蓄積という次元の問題にまで及んでいるのであろうか。