rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月4日 論説「白頭山精神を具現することは名作創作の重要な要求」

 

 標記論説は、文学芸術部門関係者に対し、「白頭山」を主題とした作品の積極的制作を訴えるもの。

 すなわち、「我が革命の歴史的経験から見ても、時代的環境から見ても、白頭山精神を思想的核とした文学芸術作品を粘り強く創作することは、極めて重要」とした上で、関係者に対して、「文学芸術部門において、社会政治的意義が大きい革命伝統主体の作品創作において転換をもたらそうとするなら、まず、幹部と創作家、芸術人が透徹した思想観点と真摯な創作態度を持たなければならない」「文芸術部門の幹部と創作家、芸術人は、敬愛する元帥様(金正恩)が切り開かれた白頭山行軍路を常に忘れず、白頭山精神がいかなるものであるかを骨の中に深く刻まなければならない」「創作家、芸術人たちは、抗日革命闘士たちのように首領に対する忠誠心を信念の柱とみなして、革命伝統主体作品作品の創作に具現していかなければならない」などとの要求を列挙している。

 このような要求の根拠として、「敬愛する元帥様は、白頭山を主題とした文学芸術作品を多く創作することについて教えて下さった」ことをあげている。

 なお、本日の「労働新聞」は、同論説の外に、「白頭の革命戦区に刻まれた絶世偉人の偉大な足跡」及び「革命の千里道踏査宿営所が立派に整備される」と題する記事も掲載している。また、昨日にも、「白頭の革命伝統を輝かしく継承していく鉄石の意志 昨年12月から今年11月まで延べ8万4千余名の人民と人民軍将兵、青少年学生が白頭山地区革命戦跡地を踏査」、「白頭山地区を革命伝統教養の拠点として立派に整えるための事業を活発に実施」と題する記事や「偉大な白頭霊将にしたがって聖なる行軍路を最後まで行く」と題する評論などが掲載されていた。

 これら一連の記事掲載は、おそらく先月29日に開催された党中央委員会第7期第21回政治局拡大会議において、「党思想事業部門を強化し対象機関に党の領導体系をより徹底して立て、政策的指導と党的指導を深化させるため党中央委員会の該当部署機構を改編する」ことが審議・決定されたことと関連するものであろう。

 端的に言えば、政治局会議の同決定は、金正恩が昨年12月、自ら行った白頭山革命戦跡地踏査行軍を大衆運動として実施するよう指示したことを文学芸術部門においても一層積極的に取り入れ、それを題材とした作品制作、思想宣伝活動などを展開することを(少なくとも一つの)柱としたものであったと考えられる。

 なお、論説の中で、「白頭山」精神を題材とした作品制作の前提として、関係者自身の思想性涵養の必要性を繰り返し強調していることは、従前そのような作品政策への取り組みが消極的であったことの背景として、彼らの思想性が批判されたことを示唆するものと考えられる。そうであれば、彼らとしては、一層、かかる作品の量産に必死にならざるを得ないであろう。

 ちなみに、最近、米国で北朝鮮作家の「友」と題する小説の翻訳本が、最も影響を与えた本の1冊に選ばれたという。その主題は、離婚問題ということで、北朝鮮らしからぬところが評価されたのかしれない。それが前述のような出来事と関係するのか否かは判然としないが、もしやとも思われ、関心がもたれる。