rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月24日 記事「除隊軍人たちが旗手になるように導いてやり―雲興製錬所初級党委員会において」

 

 標記記事は、「党思想事業を親人民的、親現実的に転換していこう」との共通タイトルの下で掲載された記事の一つである。「親現実的」というのは、現実と乖離していないといった意味であろう。

 記事のあらすじは、この製錬所の溶鉱炉の保守作業が困難に直面した際、党委員会において、製錬所に勤務する除隊軍人たちに狙いを定めて奮起を促し、彼らが「決死の覚悟で心臓を燃やし、正面突破戦の先頭で核心的役割をまっとうした」結果、「彼らの献身的な姿に感動した製錬所幹部と技術者、従業員たちはもちろん家族たちまでも炉保守を質的に前倒しして終えるための事業に物心両面からの支援に立ち上がった」。こうして「溶鉱炉保守を成果裡に終え、再び生産の槌音が高くとどろくようになった」というものである。

 ここで着目したのは、いかに除隊軍人たちを奮起させたかという話の中で、初級党委員長自ら「不足する資材を解決するため除隊軍人たちとともに端川と咸興をはじめとした数百里の遠路を往来することもした」という部分である(加えて、「作業の休みの際」に革命闘士の「百折不屈の闘争精神を彼らの骨に刻み込みもした」というのだが)。

 以前にも指摘したが、資材の確保をこうした方法で行うというのは、いかにも特徴的である。端川と言えば、マグネシア・クリンカーの生産地として有名であり、また、咸興も代表的な化学工業地帯である。憶測を逞しくすると、除隊軍人のネットワークを用いて、そういったところの生産元と直接の連絡を実現し、通常では入手困難な補修用資材を確保できたのではないだろうか。そういった資材の確保が契機となって、停滞していた保守作業が動き出したとも考えられる。作業の休み時間に聞いた革命烈士の話で奮起して必死の頑張りをするようになった、というよりは、こちらのストーリーのほうがより「親現実的」でないだろうか。

 いずれにせよ、北朝鮮経済活性化の重要課題の一つが、資材の円滑・適正な供給の実現(逆に言えば、ミス・マッチの解消)にあるということは間違いないと考えられる。そこがまさに社会主義経済の基本的弱点でもあるのであろう。