rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月31日 「超大型放射砲」試射関連補論

 

 韓国聯合通信によると、昨日の本ブログで紹介した3月29日の飛翔体発射に関連して、VOAがドイツのミサイル専門家の、報じられた写真は修正されたものとの見方を伝えており、また別の専門も同日発射されたのは、3月2,9日に発射されたもの(「超大型放射砲」)ではなかったのかとの見方を示しているとのことである。

 そう言われてよく見ると、確かに、くだんの写真は、発射機と発射されたミサイルの大きさのバランスがとれておらず(後者のほうが大きい)、発射車両の周辺の光の当たり方なども不自然といえば不自然である。おそらく、発射車両と発射された飛翔体とを合成した写真なのであろう。

 しかし、そのこととこのとき実験された兵器が何であったかということは別問題であろう。昨日のブログで指摘したとおり、2,9日に登場した「超大型放射砲」は軍部隊に配備済みとされる兵器であり、その兵器について国防科学院が「引き渡される」ものとして改めて実験を行うというのは、理解できないことである。両者は別の兵器であるとしか考えられないし、そうであれば、29日に試射された兵器である蓋然性が最も高いのは、昨年の8月に「大口径操縦放射砲」として紹介された兵器であると考えるのが妥当なのではないだろうか。

 なおこの際、昨日のブログで論じきれなかったいくつかの点を補足しておきたい。

 まずミサイル開発を担当する組織についてであるが、党中央委員会の「軍需工業部」という名称が公開されるのは異例であろう(皆無ではないかもしれないが)。その責任者(部長兼任?)が李炳哲副委員長であろう。そして直接担当する機関が「国防科学院」であり、筆頭に名前が報じられた張昌河が院長と考えられる。次に報じられた全日浩は、昨年8月12日に「威力ある新武器体系を連続的に開発完成させた特記すべき偉勲を顕彰」するために「国防科学研究部門科学者」(103人)の昇格が発表された際、筆頭の「上将」に任じられた唯一の人物であり、おそらく同院のミサイル開発部門の責任者であろう。(以上人名は音訳)

 次に、李炳哲が29日の試射の際に言及したとされる「党中央が提示した核心国防科学研究目標と主要武器生産計画」についてである。もとより、その内容は極秘事項であろうが、そういったスキームが存在し、それに沿って、新型兵器の開発及び生産が着々と進められていることを認識しておく必要があろう。

 最後に、昨年の一連のミサイル試射に登場した兵器のうち、4月17日及び7月25日に発射された「新型戦術誘導武器」と8月6日に発射された「新型戦術誘導弾」についてである。これら兵器(この両者が同一のものか別のものかも判然としないが)は、その後開発・配備状況が示されていないがどうなっているのであろうか。今後、今回の兵器のように、「軍部隊への引き渡し」に向けての改めての試射(あるいは配備済の状況での訓練発射)が行われる可能性もあるのではないだろうか。そういった意味でも、北朝鮮による各種飛翔体の発射は、今後も続くと考えておくのが無難であろう。