rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月12日 党中央委員会政治局会議を開催

 

 標記会議が11日、党中央委本部庁舎において開催されたことが報じられた。

 会議の議題は4点とされ、第一は「大流行伝染病」対策、第二は最高人民会議に提出する昨年度国家予算の決算と本年度予算、第三は同会議提出用の(国家)幹部人事案、第四は組織問題(党人事)、である。

 第一議題に関しては、「ウイルス感染の危険が短期間に解消されるのが不可能であり、したがってこのような環境は我々の闘争と前進にも一定の障害を造成する」との現状認識の下、「(昨年末の党中央委全員会議の)決定貫徹のための事業において一部政策的課題を調整変更することについて、対策的問題を研究討議」し、党中央委・国務委員会・内閣の共同決定書を採択した。

 同決定書は、「世界的な大流行伝染病に対処し、我が人民の生命安全を保護するための国家的対策をより徹底することについて」と題し、①国家的な非常防疫事業を引き続き強化すること、②今年の経済建設と国防力強化事業、人民生活安定のための具体的な目標、③党・政権機関・勤労団体・武力機関をはじめとしたすべての部門・単位の闘争課題と方途、が示されたという。このうち、①の防疫活動の継続は当然として、②は要するに昨年末に策定した諸目標をそのまま実現する見込みが立たなくなったため、それを修正・再設定したということであろう。

 第二議題と第三議題については、それぞれについて、最高人民会議第14期第3次会議に提出する案を採択したことだけが報じられ、それらの具体的内容は示されていない。元来、10日に召集されていた同会議の開催が延期されていること及びその近い時期における開催が予定されていることを示したものといえよう。

 第四議題では、朴正天総参謀長が政治局委員に、李善権外相と金与正党中央委第一副部長が同候補委員に補選されたほか、中央委員会委員、同候補委員、党中央検査委員会委員、同検閲委員会委員の召喚(解任)・補選が行われた(補選者のみ氏名公表)。

 会議では、金正恩が「各級党組織と幹部達、党員達がより覚醒奮発し党中央の政策的方針を徹底して貫徹」するよう訴えたという(おそらく結語でであろう)。

 以上が同会議に関する報道の概要であるが、金正恩の関与が従前の同種会議に比較して抑制的に報じられているとの印象を受ける。昨年末の中央委全員会議及び2月末の政治局拡大会議については、同人が「指導した」とされていたところ、今次会議では「司会した」とされているし(「金正恩同志の指導の下で行われた・・」、との文言はあるが)、彼の発言の紹介も限定的である。目標の下方調整という会議の趣旨からして、余り積極的に存在をアピールしたくないとの意向が働いたのであろうか。

 では、それら経済建設目標において具体的にどの程度、あるいはどのような調整がなされたのか、非常に注目されるが、現時点では判然としない。最高人民会議での報告・討論ないし予算規模などからある程度推測が可能になるかもしれない。今次会議で決定された幹部人事案とも含めて注目されるところである。

 なお、金与正が改めて政治局候補委員に補選された(2017年10月に選任後、昨年4月の中央委全員会議で解任と推測)ことも、最近、彼女名義の対外向け「談話」が出されていることなどとも合わせ注目すべきであろう。ただ、韓国の一部報道が「金正恩に次ぐナンバー2の位置に近づく」云々と言っているのは、やや早計であろう。いずれは、そうなるのかもしれないが、その議論は、政治局委員になってからでも遅くはないのではないだろうか。

 このほか、韓国報道では、先の政治局拡大会議において「官僚主義」などを指摘・批判され「解任」が伝えられた前組織指導部長・李万建らしき姿が今次会議出席者の報道写真の中に認められたという。彼であれば、部長職は解任されたが、政治局委員のポストは維持されていたということになる。意外な処遇と言わざるを得ない。

 ちなみに、報道写真で見るかぎり、会議参加者(金正恩以下20数名。大型円卓を囲んで着席)は、全員マスク未着用であった。本日、掲載された金正恩の空軍部隊視察記事(日時は報じず)でも、飛行士らがマスクをせずに金正恩と談話している写真が付されている。それがウイルス蔓延の実情を反映しているのかは定かでないが、警戒心がかなり緩んでいるのは間違いないであろう。