rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月12日 社説「敬愛する最高領導者金正恩同志の周囲に固く結集し主体朝鮮の尊厳と威容を万方に轟かせよう」

 

 標記社説は、昨年4月、最高人民会議金正恩が国務委員会委員長に選出されたことにちなむものと考えられるが、全体的な論旨は、執権以来の「過去8年間」を対象にその業績を称賛した上で、今後ともその領導に付き従うことを訴えるものである。ここでは、何をもって執権以来の業績としているかを中心に紹介し、その意味を検討したい。

 その第一は、「革命発展の要求に合わせて党と国家事業全般を正規化し、その基礎をよりしっかりと固められた」ことである。すなわち、「(党と国家が)規範と秩序にしたがって規則的に事業し、政策実行のための闘争へと大衆を巧みに組織動員する」こと、例えば、「前進途上に難関が醸成され革命の前に重大な課題が提起されるたびに、党と国家の重要会議を正常的に招集するようにされた」ことである。

 第二は、「人民に対する滅私服務を党風、国風として確立され、我々式社会主義の不敗性と威力を力強く誇示」したことである。その結果、「今日、我が国には、人民の要求と利益を実現することが最大の重大事となっており、人民のために滅私服務する気風が高く発揮されている」と主張する。

 第三は、「国家と人民の安全と幸福、子孫万代の繁栄のための強力な担保を準備された」ことである。とりわけ軍事面で「わずか何年の間に最強の国家防衛力を完成され建国以来最も大きな山を越える大勝利を成し遂げ、我が祖国を誰も手出しできない国、無敵必勝の軍事強国」としたことが強調される。また、経済面でも、「建設の大繁栄期と黄金山、黄金原、黄金海の新歴史、軽工業の飛躍的発展と農業部門における最高生産年度水準突破をはじめとした誇らしい成果」を誇っている。

 以上の3点のうち、第一については、金正日時代に党の主要会議がほとんど開催されなかったことなどを勘案すると、金正恩の政治スタイルの特徴とするのは、極めて妥当といえよう。11日の党政治局会議の開催は、まさにその実例である。

 第二については、その成果がどれだけ実現しているかは定かでない(おそらく「行軍途上」というべきであろう)が、金正恩が最も腐心してきた点の一つであることは間違いないであろう。

 第三については、「繁栄」そのものではなく、その「担保」を築いたとしていることに着目すべきであろう。そのような意味で、引用部分は、概ねその間の具体的な実績に基づいた主張といえる。軍事面では、まず核戦力を完成させた上で最近の短距離ミサイル開発の成果があり、経済面の記述も「重工業」へに言及がないなど現実性がうかがえる。同時に、それらが「子孫万代のため」すなわち、長期的展望に基づく壮大な構想に基づくものであることを主張したいのであろう。

 金正恩が進めてきた以上のようなスタイル・方向性について、執権以来の業績として自画自賛しているということは、それらが今後とも追求されるスタイル・方向性であろうとの予測を可能にするものといえよう。そのような意味で、以上のような社説の主張は、単なる過去の称賛ではなく、将来の針路を示したものと考えられる。