rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月9日 社説「偉大な領導者金正日同志の信念と度胸で社会主義勝利の活路を開いていこう」

 

 標記社説は、金正日が1993年4月9日、国防委員会委員長に「推戴されて27周年」を迎えたのに際して掲載されたものである。ちなみに、当時の国防委員会は、1998年以降の国家の最高指導機関としてのそれではなく、国家主権の最高指導機関である中央人民委員会の活動を助ける部門別委員会として位置付けられていた。

 いずれにせよ、そのような記念日に際しての論点として注目されるのは、金正日のどのような資質・業績をいかにとりあげるか、それを今日的な課題にいかに関連付けるか、であろう。

 まず、最初の点は、標題に示されているとおり、彼の「信念、度胸(배짱)」を主題としている。すなわち、「金正日同志は、卓越した思想理論家、偉大な政治家、鋼鉄の霊将であっただけでなく、信念と意志の第一強者、第一度胸家であった」ことに着目し、それを称賛しているのである。

 そして、それは「自主」と結び付けられ、「金正日同志の信念と度胸は、我が党と人民が自主の一路をしっかりと歩んでいくことができるようにする鼓舞的な旗幟である。自主はすなわち信念であり、度胸である。信念と度胸が強くてこそ、秋毫の動揺もなく自分が選択した道を屈することなく前進していくことができる」との主張となる。

 社説は、その主張を更に敷衍し、「金正日同志の信念と度胸」の効用として、「我々式、我々の力で富強繁栄の活路を開いていけるようにする原動力」であり、かつ「あらゆる敵対勢力どもの挑戦と策動を断固として粉砕し国家の安全と人民の幸福をしっかりと担保していけるようにする推動力」であるという。要は、積極的に建設を進めるにしても、外敵の圧迫から国を守るにしても、「信念と度胸」が重要であるというのである。

 ここで、社説は、それを受けての今日的課題として、「敬愛する最高領導者金正恩同志の思想と領導を忠実に奉じていかなければならない」ことを挙げる。それまでの金正日への称賛が突然、金正恩への忠誠へと転換するわけであるが、それを正当化するのが次のような主張である。

 「偉大な将軍様金正日)は、生前に金正恩同志の精神と気質は白頭山の精気と気象そのままであるとおっしゃり、その方(金正恩)の信念と意志、胆力と度胸は本当に驚くほどであると教示された。我々党員と勤労者において偉大な将軍様式とおりに戦っていく過程は、すなわち敬愛する最高領導者同志の信念と度胸に従い学び、(それを)具現していく過程である。」

 ここまで読むと、何故、金正日の様々な資質・業績のうちから「信念と度胸」が取り上げられたのかが理解できる。金正日金正恩を評価した点であり、同時に、今日の金正恩の政策指導の核心(俗な表現を用いれば「セールスポイント」)がそれであるからであろう。

 結局、本社説の狙いは、金正恩の「信念、度胸」に基づく、今日の「正面突破戦」が単に彼の恣意的な政策ではなく、金正日以来の伝統を正当に継承したものであることを納得させることと考えられる。