rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月30日 論説「我々式社会主義の必勝不敗の根本源泉」

 

 標記論説は、金正日が1990年5月30日に「社会主義の思想的基礎に関するいくつかの問題について」を発表した30年周年にちなむものとされる。

 論説によると、同「労作」は、当時の「世界社会主義運動の実態を科学的に透察」したものとされ、その上で、北朝鮮の「我々式社会主義」の正当性、優越性の根拠について、次のように論じたとされる。

 まず、「我々式社会主義は、主体思想を指導指針として、百勝を轟かす強力な社会主義である」ことである。「主体思想を持っているがために、社会主義の思想的基礎を強固に発展させる問題を輝かしく解決し、世間で最も優越した我々式の独特の社会主義を建設することができた」と主張する。確かに、北朝鮮社会主義が他国に見られない独特のものであることに間違いはない。

 次に、「集団主義の威力で前進していく前途洋々たる社会主義である」ことがあげられる。論説は、「社会主義の本質は集団主義にあり、その優越性と威力も集団主義にある」と主張する。では「集団主義」とは何かというと、直接の説明はないが、「祖国と人民、社会と集団のため献身することを当然の本分として、最高の生きがいとみなして、自分のすべてを惜しみなく捧げる我が人民の高潔な精神世界を離れて我々式社会主義の前進発展について考えることはできない」とされていることから、そういった祖国・社会に対する献身性、自己犠牲の精神を指すものと考えられる。

 最後にあげられているのは、「革命的原則をしっかりと固守し乗勝長躯していく不敗の社会主義である」ことである。「我々は、帝国主義者の酷い圧迫とあらゆる誘惑の中でも革命的原則、階級的原則から一寸のずれもなく」闘争してきが、「万一、我々が何かに期待をして原則を譲歩していたとしたら、・・・我が人民の運命は帝国主義者の篭絡物となりはてていたであろう」と回顧する。

 金正日が同「労作」を発表したとされるのは、ソ連・東欧の共産主義体制の連鎖的崩壊の時期である。結果的に、金正日の「予言」は的中し、北朝鮮社会主義体制は、その後今日まで30年間、その独自性・原則性を維持しつつ存続してきた。それが人民の「自己犠牲」を前提にしたものであったというのも、まさにそのとおりであろう。そのような意味で、金正日の同「労作」は、北朝鮮の「我々式社会主義」の特質を如実に示したものであったし、逆に言えば、そこで提示された路線が今日までしっかりと踏襲されてきたともいえよう。そうであるとすれば、少なくとも当分の間、そのような路線が変更されるということはありえないと考えるべきであろう。

 ただし、留意すべきは、上記のような言明にもかかわらず、その直後の時期も含めて、これまでの間、外交・通商、あるいは経済運営などの各分野で様々な振幅が繰り返されてきたことであり、何をもって「革命的原則」の範囲内とし、また「譲歩・逸脱」みなすのかは、その時々の指導者の判断に委ねられてきたという事実である。もちろん、そこには自ずと限界もあろう。それをいかに見極めるか、まさに、ここに北朝鮮分析の焦点があると考える。