rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月20日 対韓関連記事まとめ

 

 標記に関しては、まず、朝鮮中央通信の、「激昂した対敵意志の噴出 大規模的な対南ビラ散布闘争のための準備、本格的に推進」及び「秋毫も容赦できない罪悪の代価を必ず支払わせるであろう 日に日に高潮する憤怒の喊声」と題する2件の記事が掲載されている。

 このうち、前者は、19日付けとされ、題目の示すとおり対韓宣伝ビラの作成・準備が進んでいることを作業風景、同ビラを集積した場面などの写真付きで伝えるとともに、「いま、各級大学の青年学生たちは、該当する手続きにそって、北南接境地帯開放と進出が承認されれば、大規模のビラ散布闘争を展開する万端の態勢を備えている」ことを報じている。後者は、国内各層の人々の「怒りの声」を紹介するものである。

 次に「特大犯罪には時効がない」と題する記事は、金日成総合大学法学部講座長の標題のような発言をはじめ信川博物館課長、歴史学学会会員ら知識人の発言を紹介しており、一方、「心臓の叫びー前沿地帯に行こう」と題する記事は、 各大学の学生が「行こう、前沿地帯へ」との心情を吐露しつつ、前線地帯への進出を熱望していると報じている。更に、「復讐の宣言」と題する記事は、「北倉郡のある高級中学校」(高校に相当)を訪ねた記者が生徒の作成した「千百倍に復讐するぞ」との掲示物を見て、そのような言葉遣いをするに至った生徒の心情を評価称賛するものである。以上は、概ね、国内各層における「反響」のとりまとめ記事といえる。

 一方、「情勢論解説」(標題:「요사스러운 말장난을 걷어치워야 한다」:まやかしのような言葉遊びを片付けなければならない、との意か?)は、韓国側の最近の言動などに対して、「相手方に対する信頼が粉々になり、嫌悪心が極度に達しているのに、どうして油を塗ったような言葉数句で北南関係を2年前に戻すことができようか」として拒否感を示すと同時に、「南朝鮮当局者がしでかした罪の値をはっきりと受け取ろうというのが我が人民と人民軍将兵の確固不動たる意志である」として、韓国側の対応にかかわらず、報復措置を実行する意向を強くにじませている。

 このほか、韓国内のインターネット新聞「自主新報」及び「統一ニュース」の記事を紹介する形で、韓国内諸団体などによる政府(後者は「朝鮮半島情勢を激化させる米国と南朝鮮当局」)批判の動向を紹介している。

 以上の記事を見る限り、昨日に指摘したとおり、北朝鮮の当面の関心は韓国へのビラ散布活動に集中しており、韓国側の対応いかんにかかわらずそれを実行するとの方針を固めていると考えらられる。換言すると、少なくとも、同活動がひととおり終了するまでは、韓国側とは、「非難の応酬」を含めて、やりとりをする考えはないということであろう。

 文政権が金与正の17日付け談話に対して、「無礼」などと異例の批判を加えたにもかかわらず、北朝鮮からの反発が示されていないことについても、韓国側の一部で期待するような「宥和」の余地を残すための自制とかではなく、「一切相手にしない」との原則に即したものと考えた方が現実に近いのではないだろうか。そもそも、17日の談話自体が、文政権に対して何かを要求するためというよりは、むしろ人民に向けて、文大統領がいかに悪辣な「鉄面皮」であるかを教育・説明するためのものであったと考えれば、そのような対応は不思議なものではない。人民を教化できれば、後は韓国側になんと言われようと関係ないからである。当面は、北朝鮮側の一方的措置が進むと考える。