rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月19日 評論「輝く時代語 党中央決死擁衛精神」(6月19日)

 

 標記評論をここで紹介する理由は、最近、金与正の存在感が高まる中で、同女のことを「党中央」と呼称しているとの「情報」というか「噂」がしばしば取り上げられている折、この言葉を取り上げて解説する評論が掲載されたためである。

 結論を先に述べると、少なくとも本評論に関する限り、「党中央」との表現は、首領ないしその後継者、すなわち金日成、・金正日金正恩だけを指す言葉であり、現時点に限っていえば、金正恩以外の金与正ないしその他のいかなる人物を指すないし含む概念として用いられているとは到底考えられない。

 具体的に評論の内容を紹介すると、まず総論として、「党中央決死擁衛精神、これは敬愛する最高司令官同志の身辺安全と権威、思想と業績を命を捧げて固く擁衛していく我が人民の精神を反映した時代語である」とした上で、特に「命令・指示」の貫徹と結び付けて論じられている。すなわち、「いかなる試練と難関の中でも敬愛する元帥様(金正恩)の命令指示を絶対性、無条件性の原則で決死貫徹し、必要であれば命も躊躇なく捧げる固い闘争精神、肉弾精神がまさに党中央決死擁衛精神である」ということが繰り返し強調されている。

 仮に、今、金与正を「党中央」と呼称し、その権威・指導権を強化しようとしているなら、もう少し含みのある表現があってもしかるべきと思うが、それらしきニュアンスは、少なくとも私は、感じ取ることができなかった。

 ちなみに、平素の報道でも、時に「党中央」との表現が使われることがあり、前述のような「情報」を踏まえて、最近ではその都度、かなり慎重にその意味を斟酌しているのだが、金正恩ではなく金与正を指していると考えられる徴表を得るには至っていない。

 現時点においては、少なくとも、外部の目に触れる報道で使用される表現として、金与正を「党中央」と呼称するということは、行われていないと考える。もちろん、そのことと内部的な文書や口頭ではそれが行われている可能性とは別問題であり、そこまで明確には否定できない。しかし、それも、同人の名前への公開報道上の言及が極めて抑制的であることからすると、やはり懐疑的な印象を抱かざるを得ない。ただ、彼女の存在感が急速に強化されつつあることは間違いのないところであるので、この問題も予断を持たず注視していきたい。