rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月22日 対韓関連記事まとめ

 

 標記に関しては、まず、同日付けの朝鮮中央通信社報道として掲載された「憤怒の激流、全人民の対敵報復決意」と題する記事がある。

 同記事は、対南ビラ散布に関して、「歴代最大規模の対敵ビラ散布闘争のための準備が終わりつつある」とした上で、

  • 「中央の各級出版印刷機関においては、各階層人民の憤怒と敵愾心が盛り込まれた1,200万枚の各種ビラを印刷した」ほか、「各道。市・郡印刷工場においても数百万枚の対敵ビラを追加印刷するための準備」を整えていること
  • 「22日現在、3,000余個の多様な風船をはじめとして南朝鮮の深い縦深にまで散布することができる各種ビラ散布機材、手段が準備された」こと

を明らかにしている。また、その散布の意義として、「ビラと汚物、それを収拾することがどれだけ頭が痛いことであり、どれだけ気分が悪いことであるかを一度しっかり味わってみてこそ、癖が改まるであろう」として、韓国側に自分たちと同様の経験を味合わせることにある旨を強調している。

 次に「痼疾的な事大と屈従の必然的産物」と題する情勢論解説は、対北朝鮮政策の調整に当たった「韓米実務グループ」の設置などを例に上げつつ、「(南北首脳会談後の)過去2年間、南朝鮮当局は、民族自主ではなく、北南関係と朝米関係の『善循環』というとんでもない政策に邁進してきており、(最近になって)遅ればせながら『運身の幅を広げる』と気炎を吐いたときでさえ、『制裁の枠の中で』との前提条件を持ち出した」ことを非難し、「今日、北南関係が米国の徹底した篭絡物に転落したのは、全面的に南朝鮮当局の執拗で痼疾的な親米事大と屈従主義が生んだ悲劇である」と決めつけている。

 そして、「このように卑屈で屈従的な相手とこれ以上民族の運命と未来がかかった北南関係を論ずることはできないというのが我々が再度下すに至った結論である」とし、「同族に背反し時代と屈従の道で綱渡りをする背信者、逆賊一味には、悲惨な終末だけがもたらされるであろう」と述べて、文政権とは、これ以上交渉する意向がないことを強調している。

 このほか国内の「反響」については、「民族を投げ捨てた背信の代価がどれだけ残酷であるかを必ず痛感するであろう 活火山마냥(のように、の意か?)噴出する報復熱気」と題し、各地企業所の幹部・労働者、協同農場農民、金策工業総合大学学部長らの声を紹介する朝鮮中央通信の記事を掲載している。

 一方、韓国内の動向については、「反共和国対決策動の中止を要求」と題する記事が、韓国のインターネット新聞「民族日報」の報道を伝える形で、「反トランプ、反米闘争本部が12日、ソウルの米国大使館前で記者会見」を行い、脱北者団体の活動等を非難したことを報じている。

 以上のとおり、北朝鮮は対南ビラ散布を「報復」と位置づけ、国内ではそれに向けた機運の盛り上げに力を注いでいる。

 なお、同計画については、韓国の左派系とされるハンギョレ新聞も、今日22日の社説で次のとおり批判的な反応を示している。

「対北朝鮮ビラと対韓国ビラはいずれも南北関係に百害あって一利なしである点では同じだ。特に、北朝鮮が公開した対韓国ビラの内容は眉をひそめさせるものだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領を堂々と嘲弄し、侮辱する内容が書かれていることを見ると、韓国の内部事情について誤解しているようだ。このようなビラは、南北和解協力を支持する韓国国民をも北朝鮮に背を向けさせる危険性が高い。」

 しかし、私が思うに、北朝鮮は、「韓国の内部事情について誤解している」のではなく、それを充分承知の上で、国内教化という狙いのために「対敵ビラ散布闘争」を実施したいのであろう。それでもなおかつ韓国当局が対北ビラ配布を規制すればそれでよいし(そこで一応矛を収める)、仮にそれが行われず「南北関係が総破綻」しても、それはそれでやむなしというのが今の考えであろう。それだけ、「韓国を敵」と認識させる国内教化の必要に迫られていたということではないだろうか。