rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月1日 金才竜総理が平壌市内所建設場を現地了解

 

 標記記事は、金総理が平壌市内の楽浪区域登山洞地区の建設現場(おそらく住宅建設であろう)と龍城区域龍文小学校の新校舎建設場(地名等は音訳含む)を視察したことを報じたものである。重点は、前者のようで、建設工事における質の確保と工期の厳守を強調したとされる。

 ここで、注目したのは、その際、あわせて、「(関係部門)幹部達が新たに建設された住宅に入居する住民達の生活にも関心をめぐらせ、(住民らから)提起される問題をその都度、解決してやることによって、彼らが些細な不便もないようにするための対策を講究した」とされていることで、住宅の供給だけでなく、入居後の生活の利便性にも腐心の跡を示していることである。

 金総理の今次視察が先の党政治局会議で示された「首都市民の生活保障」方針に基づくものであることはいうまでもないと思うが、上述のような報道内容からうかがえるのは、切迫した生活基盤の確保・提供というよりは、それなりに余裕のある生活水準を具体化していくことが課題になっているということである。

 このことについては、6月27日の本ブログでも指摘したとおりであるが、最近でも「平壌市内で食糧配給が3か月途絶」などとの情報がとりざたされていることから、改めて指摘しておきたい。食料配給も満足に保障できない中で、総理の陣頭指揮の下、新たに住宅を提供された住民の「些細な不便」の根絶に向けた対策をとるであろうか。また、いかに「教育重視」が国策とはいえ、小学校の新校舎を建設するであろうか。いわんやそこを総理が視察するであろうか。仮に、巷間伝えられるようないわゆる「第二の苦難の行軍」が予測されるような状況であるとするなら、総理として、本来取り組むべき喫緊の課題があるでしょうと、いうことになるのではないだろうか。

 ちなみに、6月下旬に報じられた金総理の「現地了解」先をみると、23日に「咸鏡南道化学工業部門と関連単位」、29日に「宝山(音訳)製鉄所と平壌建設機械工場」となっている。また、同時期の朴奉柱党副委員長の「現地了解」は、28日「人民経済諸部門」として順川セメント連合企業所、金星トラクター工場などを訪れたことが報じられているだけである。これら訪問先からも、今現在、基本的な食糧の供給が喫緊の重要課題になっているとは考えにくい。

 管見の限りでは、最近流布されている「平壌配給途絶」説などの情報源は、「北朝鮮消息筋」など得体のしれないものが多いようにみえる。端的に言えば、それらは、「金正恩死亡」説などの出所と大同小異なものではないのか。「死亡」説は、本人が出現すればそれで直ちに間違いであることが判明するが、「配給途絶」説などは、証明もできないかわりに否定もされにくい。だからと言って、それに安易に便乗することは、少なくとも分析や報道などを業とするプロの職業倫理として、果たしてどうなのか、再考を促したい。