rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月6日 金正恩「特別命令書」の中身

 

 本日の「労働新聞」掲載の「金徳訓総理、人民経済諸部門事業を現地了解」と題する記事の中で、同総理が「楽浪区域糧政事業所をはじめとした平壌市内の糧政部門単位(複数)を訪れ、人民生活安定のため党中央が取った特別措置の施行状況を了解し、党の熱い恩情が人民に正確に及ぶように」努めることを指示したと報じている。

 ここで言う「党中央が取った特別措置」というのは、おそらく先の党中央委員会第8期第3回全員会議において、金正恩が自ら署名して下した「特別命令書」に盛り込まれた内容であると考えられる。そして。それが食糧配給などを担当する糧政事業所において施行されているとすると、その内容は、住民に対する食糧の配給に関する事柄(例えば、増配など)であると推測することができよう。

 先月末の党政治局拡大会議において李炳哲、朴正天らが批判・解任された理由として、同命令書において軍糧米の放出が指示されていたにもかかわらず、同人らがこれを履行しなかったためとの推測が伝えられていたが、仮にその推測が正しいとすると、今回の李総理の同部門の視察は、同会議でのそうした「怠慢」行為への批判を経て、同命令が確実に実践されているかを確認するためであったのかもしれない。

 いずれにせよ、現在、金正恩の「熱い恩情」をアピールする形での食糧配給が実施されているのは間違いないであろう。ただし、それが平壌市内に限定されたものなのか、あるいは他の地域にも及んでいるのかは更なる確認が必要である。

 ちなみに、同記事の中心テーマは、金総理が「災害性異常気象に対処するための農業省と気象水文局の事業状況を具体的に了解し、協議会を開催した」ことで、他の報道でも、この問題が現下の最重要課題として取り組みが督励されていることがうかがえる。