rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月27日 金正恩の「祖国解放戦争勝利67周年」関連動向を報道

 

 標記に関し、二つの記事が掲載されている。「祖国解放戦争参戦烈士廟」への参拝・献花と軍高官への記念拳銃の授与式挙行である。いずれも26日とされる。

 前者に関して、同行者として名前が明らかにされたのは、総参謀長朴正川だけで、後は「軍指揮官達」としか報じられていないが、写真には金正恩と共に10数名の軍服姿の人物及びその後方に金与正らしき姿も写っている。興味深いのは、こういった際の献花といえば、金正恩名義の付された花かごのようなものを捧げるのが通例と思うが、今次は、金正恩も他の軍人らも同様にそれぞれ一輪の花を捧げていることである。金正恩と他の軍人をいわば同格扱いしていることになる。

 後者は、党中央本部の前回中央軍事委拡大会議が開催された部屋で挙行された。そこで、金正恩は「共和国武力の主要指揮メンバーたちが党と革命、祖国と人民の前に帯びた崇高な使命に無限に忠実で、主体革命偉業の終局的勝利のため党に従って遠く険悪な革命の道を変わることなく最後まで行くであろうということを確信しつつ、信頼の徴表として、自分の尊名が刻まれた意義深い「白頭山」記念拳銃を直接授与された」という。授与に際しては、金与正が金正恩の後ろに控えており、拳銃を彼にわたす役割をしたのであろう。

 授与式の参加者は、個人名が報じられたのは、朴総参謀長だけであり、後は「朝鮮人民軍軍種及び軍団級単位指揮官達、朝鮮人民軍保衛局長、国家保衛相、社会安全相、護衛司令官、護衛局長、護衛処長、国務委員会警衛局長をはじめとした各級武力機関の主要指揮官達、朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会執行委員会委員達」とされており、彼らが授与対象と考えられる(他に党中央委員会幹部も出席の由だが、彼らは授与対象には含まれていないであろう)。授与対象者の数は、記念写真によると、室内で撮ったものに31人、屋外のものに22人が写っており、合計53人とみられる。

 授与対象者の職責で注目されるのは、護衛司令部関係だけ、司令官、局長、処長の3人が含まれていることで、自分の直近にはそれだけ手厚く遇しようとの考えが如実にうかがわれる。また、「国務委員会警衛局」というのは初めて明らかにされる、正体不明の組織である。聯合通信の報道では、その名称から国務委員らの警護を担当と推測しているが、国務委員は各様の地位・職責のメンバーで構成されており、その警護のために独自の組織を新設するとは考えにくい。推測であるが、従前、重要国家機関の警備などを担当していたとされる旧・人民警備隊(現内務軍、社会安全部傘下)の当該部門だけを独立させたのではないか。あるいは、更に憶測を逞しくすると、同局が核・ミサイル戦力関連(開発・保管を含めて)の警備を担当している可能性もあろう(開発担当の国防科学院は国務委員会の直属組織)。それら任務を国務委員長(すなわち金正恩)の直轄組織を設けて、担当させるというのは意味のあることであろう。去る5月に開催の中央軍事委第4回拡大会議において、金正恩が「安全機関の使命と任務に合わせて軍事指揮体系を改編することについての命令書」に署名したことが報じられている。これに基づいてそのような組織改編がなされたと考えることもできるのではないか。すべては推測であるが。

 いずれにせよ、今回の「尊名入り拳銃」の授与は、前述軍事委第4回拡大会議の際の将官大量昇格とも軌を一にした、金正恩による軍慰撫の狙いによるものと考えられる。勘ぐれば、烈士廟で共に一輪の花を捧げたのも、親近感培養のためともいえよう。従前は、彼の軍に対する姿勢は、比較的厳しめで、「使い倒す」ような印象であったのが、なぜ、この時期、そのような姿勢に転じたのか、背景・狙いが非常に注目される。授与式で金与正が介添え役を務めたことも、烈士廟参詣への同行とも併せて、軍に対する彼女の存在感印象付けという狙いがうかがわれるところ、それと関連する(つまり金与正への支持取り付けのため軍を厚遇)と考えることも可能であろう。更なる検討が求められるところである。