rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月19日 社説「祖国と人民の運命に偉大な転換をもたらした朝鮮労働党

 

 標記社説は、間もなく創建75周年を迎える、とされる朝鮮労働党の業績を回顧・称賛するものとして書かれている。ただ、何故、それが今日掲載されるかと言えば、やはり今日、開催されているはずの党中央委員会全員会議との関連を考えざるを得ない。端的に言えば、同会議の決定は、ここで描かれたところの党の歴史・業績を踏まえ、それを更に強化・発展させていくものとなることを予測することができよう。

 社説の内容は、冒頭、「去る75星霜、我が党が積み上げてきた業績中の業績は、最も尊厳高い自主強国、自力で粘り強く前進発展する前途洋々たる国家、真正な人民の国を建設し、我が人民を偉大な人民として育てたことである」とした上で、そのような業績を敷衍するとともに、それを収めることができた理由などについて縷々論じている。「1」と「2」からなる、かなりの長文であるので、以下さわりの部分だけ紹介する。

 まず「1」では、「労働党時代は、我が祖国と人民の運命と生活において根本的な変革が起きた民族史に特記すべき激動の時代」と主張し、その業績の冒頭に「事大依存思想が深く根を下ろしていたこの地に自立、自力で繁栄する尊厳高い前途洋々余殃たる国家を打ち立てた」ことを掲げている。

 ただし、その文脈では、「いまだに社会主義強国の基礎を固める段階にあるだけに人民生活が満ち足りず、・・解決すべき問題も少なくない」ことを認めた上で、「(しかし、それらは)不可避な挑戦であり、必ず越えなければならない峠である」とし、「(それを超えれば)我が人民は世間で一番幸福な生活を享受することになる」として、更なる忍耐・奮闘を呼びかける主張もされている。

 また、「2」では、前述のような業績を収められた理由として、「思想において主体をしっかりと立て、自主的な路線と政策を実施したためである」と主張している。そして、その文脈において、「封鎖によって我が経済の正常的発展に天文学的な被害を及ぼしつつも、鉄面皮に、いわゆる『繁栄』を実現できるかのごとくうそぶく仇敵の誘惑はその場ではねのけた」ことに言及する。これがトランプ大統領とのやりとりであることはいうまでもない。

 ここで掲げられるもう一つの理由は、「人民大衆に対する崇高な信頼と愛の政治を施したため」である。なお、ここで言う「信頼」の意味は、それに続く、「我が党の政治は、人民に対する信頼、大衆動員力の最高精華として光を放っている」との表現が端的に示すように、動員対象としての評価にほかならない。

 以上のように本社説は、「党の歴史」を称賛する形で、実は、このところの「正面突破戦」路線及び「人民大衆第一主義」の正当性を強調するとともに、その成就のためには、更なる持・奮闘が必要であることを訴えるものといえよう。そこから推論すると、本日開催の中央委員会全員会議は、そのような路線の延長線上に位置づけ得るものと考えてよいのではないだろうか。少なくとも、それを全否定した新たな方向性が示されるとは考え難い。

  なお、昨日の本ブログで、13日開催の政治局会議(参加者約120~140名程度と推測)について、「事実上、全員会議と同規模」と記述したが、中央委員会は、委員だけで約120名余りいるほか候補委員が100名いるので、それだけで200名を超えることになる。「同規模」というのは不正確な描写であったので、当該記述については、お詫びして取り消します。ただ、政治局会議で大方のことは決めることができるわけでその直後に敢えて全員会議を開催するのは「尋常でない」との見方に変わりはない。