rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月9日 社説「朝鮮労働党委員長同志の思想と領導を高く奉じ社会主義建設偉業を輝かしく実現していこう」

 

 標記社説は、4年前の2016年5月9日、第7回党大会最終日に金正恩が党委員長に選出されたことに際し、同人の「思想と領導」がその後果たした成果とそれに関連した今後の課題を訴えるものである。

 まずは、「去る4年間の闘争において収めた最も大きな成果」として、「我が党の戦闘力と領導力が非常に強化されたこと」をあげる。具体的には、「全党に学習熱風が溢れ、党事業が人との事業へと転換され、党事業全般に人民大衆第一主義が徹底して具現されたことによって、党と革命隊伍の組織思想的強固化と一体化、単一化がより確固として実現された」と主張する。

 次にあげる成果は、「我が国家と人民の自力更生の革命的立場と精神がより透徹した」ことである。「すべてのものが難しい条件下においても、共和国の尊厳と位相が最上の見地に昇り立ち、時代を代表する記念碑的創造物が林のように出来上がり、人民経済の自立性と主体性が一層強化された」と自賛している。

 第三にあげるのは、「我々式社会主義特有の優越性がより鮮明に浮き彫りにされた」ことである。それが何を指すかと言えば、「人民に対する滅私服務が革命的党風、国風として徹底して確立され、党活動と国家活動の人民大衆第一主義によって一貫された」ことのようである。「人民大衆第一主義」は、冒頭の成果に関しても言及されており、それが金正恩の施策の「目玉」になっていることがここからもうかがえる。

 以上を踏まえた今後の課題として求められるのは、第一に「(金正恩)委員長同志の思想と領導を心を一つにして忠実に奉じて」いくことである。それが意味するのは、口先だけの「忠誠」表明ではなく、「党が提示した戦闘目標を一寸も違えることなく無条件に遂行」するとともに、「党の思想と背馳する些細な要素も絶対に許容・黙過せず、鋭い闘争を展開して我々の思想的陣地を盤石に固めていかなければならない」との要求である。

 次の課題は、「正面突破戦に総邁進」することである。先の順川リン肥料工場竣工を踏まえて「初の勝戦砲声を壮快に轟かせたその気勢、その気迫で継続革新、継続前進していかなければならない」と訴える。

 第三、第四の課題は、党員及び党組織がそれぞれの役割を発揮することである。前者については「党員が活発に動けば群衆が立ち上がり、全国が沸き立つようになる」として、党員に率先垂範を求めている。後者に関しては、「可視的な成果一面に偏し、思想教養事業を疎かにする現象を徹底して無くし、世代を継いで固めてきた階級陣地、革命陣地をよりしっかりさせることに総力を集中」することを求めている。「思想陣地」の堅固化は、第一の課題の中でも掲げられており、目下の最重要課題となっていることがうかがわれる。

 ちなみに、本日の「労働新聞」には、この社説のほかにも金正恩の党委員長就任4周年にちなんで、「人民は最大の栄光を捧げます」などの記事がいくつか掲載されている。金正恩の執権後8年余りが経過したことになるが、北朝鮮の認識としては、その8年を区切る一つの大きな節目として、党委員長就任が意識されているのかもしれない。

 ただ、その前後で北朝鮮政治のスタイルなり政策に何か意味のある転換があったのかというと、直ぐには思い浮かばないし、社説の上掲主張からもそれについての特段の示唆はうかがわれない。しいて言えば、「自力更生」がより鮮明化したことだろうか。それは換言すると、第7回大会の意味は何であったのかという問いにもつながることになる。今後の宿題としたい。